日本国内で臨床分離されたカルバペネマーゼ産生菌を含む232株の腸内細菌科細菌(Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Enterobacter cloacae等)についてillumina MiSeqまたはNextSeq及びOxford Nanopore MinIONによるゲノム解析を行い、unicyclerによるアセンブルを行った。232株のうち、205株はプラスミド上にカルバペネマーゼを保有し、177株のInc型を決定できた。カルバペネマーゼであるIMP-1遺伝子はK. pneumoniae、K. oxytocaにおいてはIncFプラスミド、E. cloacaeにおいてはIncHI2プラスミド上に見つかり、それぞれ優位を占めていた。IMP-1の伝達・保有にはIncFとIncHI2型プラスミドが重要な役割を担っていた。 本研究におけるゲノム解析及び公開ゲノムデータから、薬剤耐性遺伝子とIncFの強い関連性が示されているため、IncFプラスミドの解析を進めた。染色体とプラスミドの関係を探索するため、利用可能なゲノムデータの多い大腸菌を対象とした。wgMLSTのLocusの有無によって2値化した大腸菌染色体データを用い、検出頻度が低いIMPに代え、CTX-M遺伝子をマーカーとして、機械学習の一つである決定木(Decision-Tree)による解析を行った。その結果、薬剤耐性傾向の強いクローンではIncFへのCTX-M遺伝子の組み込みが多い傾向が見られた。薬剤耐性傾向のクローンは45個のlocusの保有パターンによって判別可能で、IncFプラスミドへのCTX-M遺伝子組み込みや、薬剤耐性プラスミド獲得・維持には染色体の特性が関与する可能性が示された。プラスミドの進化を解明するには染色体との相互作用に注目する必要があることが明らかとなった。
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