研究実績の概要 |
連携病院である津山中央病院で臨床分離されたMRSAについて, 1期 (2011年5月~2012月11月), 2期(2015年1月~2016年3月), 3期 (2018年)と経年的な調査を行っている. そして, これまでの調査により, 院内感染型MRSA(HA-MRSA)の分離数は減少傾向にあり, 逆に市中感染型MRSA(CA-MRSA)の分離数は増加傾向にあることがわかっている. また, 各期において, 複数分離されている同一のPOT型をもつ菌株が存在し, これらについて, 1期-3期で比較を行ったところ, 1期に比べて3期では, 分離される HA-MRSAのバリエーションは乏しくなっているのに対して, CA-MRSAはバリエーション豊かになっていることがわかった。 CA-MRSAの増加に伴い、3期におけるCA-MRSAの定着因子であるバイオフィルム形成能について調べてたところ、1期に分類されたCA-MRSAに比べ、はるかに高いバイオフィルム形成能を持つことが示された。また同期に分離されたHA-MRSAに関しても1期より高いバイオフィルム形成能を持つことが分かった。また、3期のCA-MRSAとHA-MRSAのバイオフィルム形成能を比較したところ、CA-MRSAの形成能が優位に高いことが示された。 抗菌薬適正使用の指標とされる3系統の抗菌薬(セフェム系抗菌薬、マクロライド系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬)の1~3期の薬剤感受性を精査した。HA-MRSAとCA-MRSAの3系統の抗菌薬への感受性の変化に違いを見出すことができた。HA-MRSAでは1~3期とも3系統の抗菌薬すべてに対して耐性を示した。CA-MRSAでは1期に比較し、3期では高度耐性化した菌株が増加していた。
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