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2021 年度 実施状況報告書

長期にわたり臨床分離されるMRSAの定着に関わる因子の解明と排除のための方策

研究課題

研究課題/領域番号 20K10459
研究機関就実大学

研究代表者

塩田 澄子  就実大学, 薬学部, 教授 (00368698)

研究分担者 山田 陽一  就実大学, 薬学部, 講師 (30610927)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードCA-MRSA / バイオフィルム / POT型 / 臨床分離株
研究実績の概要

目的は「長期にわたり臨床分離されるMRSAの定着に関わる因子の解明と排除のための方策」を構築することにあり、2011年から2018年に臨床分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)をPCR-based ORF Typing(POT法)により決定されるPOT型を用いて分類してきた。POT型はMRSAに特徴的な遺伝子の保有情報をPOT型という3つのナンバーで表すことで、高度な識別能を持つ。MRSAのSCCmecの分類ができるほか、POT型が一致すれば同一菌株であり、院内の伝播の状況も把握できる。POT型106はSCCmecⅣ型であり、市中感染型MRSA(CA-MRSA)であることを示す。CA-MRSAでは、levofloxacinとclarithromycinへの抵抗性を持つ株が増加しており、特にclarithromycin耐性では耐性遺伝子のermCの獲得が関わっていた。同時期に複数の同一のPOT型が分離された株には、1期から3期まで継続して分離された106-9-2株と3期になって初めて分離された106-147-45株がある。MRSAの型別を示すMLST解析を行ったところ、106-9-2株はST8(CC8)であり、日本固有のクローンであるCA-MRSA/Jであることが分かった。一方106-147-45株はST805(CC1)と106-9-2株とは異なる系統であった。また、本株は高いバイオフィルム(BF)形成能を持っており、これにより院内に定着してきていると推測された。本菌が産生するBFの成分を調べたところ、細胞外DNAの割合が減少し、たんぱく質の割合が増加していることが分かった。その他の成分である多糖等の割合には、明白な違いが見られなかった。BFの成分の解析を行うことにより、BF形成阻害のためのターゲットの探索につながる可能性が期待された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3期に分離されたMRSAの内、88%がCA-MRSAであった。3期の分離株のバイオフィルム形成能測定し、1期の分離株と比較した結果、3期に新たに検出されたPOT型106-147-45株では、バイオフィルム形成能が高くなっていた。バイオフィルム形成に関わる成分として、DNA、及びタンパク質の量を測ったところ、タンパク質量が増加したことが分かった。バイオフィルム形成能が院内への定着に関わっていることも示唆されたことから、院内への定着のしやすさにバイオフィルム中のタンパク質の割合増加が関与している可能性が示された。また、院内におけるMRSAの定着を防御する観点で、別の方向からMRSAのバイオフィルム抑制を方法を探索している中で、紫発光ダイオードにバイオフィルム形成を阻害する効果があることを見出した。同時に当該年度中に生薬学教室や他大学から提供された生薬や放線菌の抽出物のバイオフィルム形成阻害の効果についても調査中であるが、現在のところ、阻害効果を示すものは見つかっていない。引き続き、調査を行っていく。

今後の研究の推進方策

1期から3期に臨床分離されたMRSAの性状解析がほぼ終わったが、引き続き2021年度を4期として、4期に臨床分離されたMRSAを津山中央病院から分与いただき性状解析を行っている。3期で初めて院内への定着が見いだされたPOT型106-147-45株は4期において、数多く見出されており、バイオフィルム形成能が定着に関与することが明らかとなった。本菌の病原性因子や、院内での感染状況を調べることにより、病院内におけるリスク評価を行う。また、バイオフィルム形成阻害物質の探索を生薬学教室から提供された物質や、他大学から提供された放線菌の抽出物を中心に行う。バイオフィルム形成阻害物質については有効なものをすでに得ており、消毒剤やフィルム等のコーティング剤などへ応用が可能か検討している。さらにはその臨床応用の方策を考える。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍のため、感染状況が厳しかった前期の大半が学生が大学に入校できなかったことにより、研究に遅れが生じた。また、第4期を2021年度から収集する予定が遅れていまい、臨床分離株の分与が滞り、型別解析に着手できなかった。2022年になり、病院とも行き来ができるようになり、100株弱を入手できたことから、現在POTキットを購入し、これを使った型別解析を行っている。また、バイオフィルムに関わる成分を明らかにするために、高度なバイオフィル形成能を持つ株が産生するタンパク質の解析に助成金を使用していく計画である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Reduction of MRSA biofilm formation with ultraviolet light emitting diode.2022

    • 著者名/発表者名
      Y. yamada, R. Shimada, S. Yamamoto, T. Maiguma, H. Nuno, T. Tanaka, T. kudo, S. Shiota
    • 雑誌名

      The Shujitsu University Journal of Pharmaceutical Sciences

      巻: vol.9 ページ: 60-63

    • 査読あり
  • [学会発表] 臨床分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の 分類とバイオフィルム成分の解析2022

    • 著者名/発表者名
      岡本さつき,山田陽一,益田菜々子,和田朋子,杉山哲大,塩田澄子
    • 学会等名
      第142回日本薬学会
  • [学会発表] 持続的な抗菌効果・抗バイオフィルム 形成効果を示すコーティングの開発2022

    • 著者名/発表者名
      加藤有里菜,上田剛慈,加藤久登,工藤季之,鈴木宗,塩田澄子,山田陽一
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 紫外発光ダイオードによる バイオフィルム形成抑制2022

    • 著者名/発表者名
      斎藤春花,島田莉奈,山本宗市,布隼人,田中利夫,工藤季之,塩田澄子、山田陽一
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 臨床分離されたMRSAの性状と薬剤耐性及びバイオフィルム形成能に関する変化,2021

    • 著者名/発表者名
      益田菜々子,若狭成海,三宅悠太,山田陽一,岡部紀子,平順之,和田朋子,杉山哲大,塩田澄子
    • 学会等名
      第94回日本細菌学会
  • [学会発表] 抗菌・抗バイオフィルム形成コーティングの開発2021

    • 著者名/発表者名
      山田陽一,加藤久登,塩田澄子
    • 学会等名
      第74回日本細菌学会中国・四国支部総会

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公開日: 2022-12-28  

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