研究課題/領域番号 |
20K10460
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研究機関 | 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター |
研究代表者 |
宇野 賀津子 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター, その他部局等, 研究員(移行) (50211082)
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研究分担者 |
吉崎 和幸 大阪大学, 産業科学研究所, 特任教授 (90144485)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IL-6 / トシリズマブ / 多中心性キャッスルマン病 / 関節リウマチ / COVID-19 / PLS2解析 / サイトカイン / ケモカイン |
研究実績の概要 |
「血清中サイトカイン・ケモカインのPLS2解析によるキャッスルマン病と関節リウマチの疾患特性の解析」を行い、2021年のキャッスルマン病国際会議で発表を行った。またPasKen Jに論文を発表した。なお、その後、COVID-19の広がりもあり、この疾患にもトシリズマブ(TCZ)の有効性があきらかにされたことから、キャッスルマン、リウマチ、COVID-19の3疾患のTCZ治療前後のサイトカイン・ケモカイン動態について、解析を行なった。その結果、3種の疾患で共通して上昇している項目、キャッスルマン病特異的、リウマチ特異的、COVID-19特異的な項目が明らかとなった。また、治療後の変化についても疾患特性が認められた。 TCZによる治療は、各疾患患者の病状を大幅に改善した。実際、それぞれの疾患で有意に増加していたCRPは急速に減少した。多くのサイトカイン・ケモカインは一過性の上昇は認められたものもあるが、多くは、さらに時間経過とともに低下した。ただ、キャッスルマン病では一部の項目で大きく動態は異なっていた。多変量解析の一つであるPLS2解析により疾患ごとの違いを検討したところ、キャッスルマン、リウマチ、COVID-19は健常人と比べてそれぞれ大きく異なっていた。TCZ治療前後で検討しても、それぞれ違いがあった。これらの結果は、この3種の疾患それぞれは、IL-6がキイサイトカインであるものの、病因も発症機構も大きく異なっていることを示唆していた。これらの結果をもとに、Cytokine国際会議にて発表予定であり、また、現在英文論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初はキャッスルマン病と関節リウマチを対象としていたが、2020年からCOVID-19が広がり、この疾患治療にもトシリズマブが有効であることが明らかにされた。関節リウマチは自己免疫疾患、COVID-19は感染症、キャッスルマン病は病因不明と病因はそれぞれに異なっているが、いずれも疾患の中心に、IL-6があることが明らかにされた。筆者らが用いたPLS2解析法は、疾患の共通点、相違点を明らかにするのに、有用と考えられた。当初の予定からはさらに幅を広げてCOVID-19の結果も取り込み、論文化への準備ができたと考えれる。
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今後の研究の推進方策 |
今回、3種の疾患の疾患特性について、サイトカイン・ケモカインの特性から比較検討することができ、方法論もほぼ確立したと考えている。しかしながら、キャッスルマン病は、病因もまだまだ不明である。血清中サイトカイン・ケモカインのマルチプレックス法による測定は、検体量も少なく、患者への負担もない。必要に応じて、更に測定項目を広げ、病因に迫ることができればと考える。
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