研究課題/領域番号 |
20K10462
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研究機関 | 神奈川県衛生研究所 |
研究代表者 |
陳内 理生 神奈川県衛生研究所, 微生物部, 主任研究員 (70622752)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Neisseria menigitidis / VNTR / 分子疫学的解析法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は小型次世代シークエンサーであるMinION (Oxford Nanopore社)を用いて、データ共有が容易で、従来使用されているMulti locus sequencing typing(MLST)法よりも分解能の高い新規分子疫学的解析法を開発することである。この方法はMultilocus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA)をベースとして、既報のものよりも対象領域を増やし、薬剤耐性感染遺伝子も同時検出することを目標としている。本年度は保有菌株のゲノム配列を決定し、それらを元にMLVAの新規領域を選択することを予定していた。また、このゲノム解析にあたり、菌株のスクリーニングとしてMLSTを予定していた。しかし、従来のサンガー法では労力がかかるものと考えられた。そこで、マルチプレックスPCRによりMLSTの対象領域を増幅し、MinIONでその配列を決定し型別することを考えた。加えて、この際に既報の領域を対象としたMLVAを同時に行うことで、スクリーニングの精度を上げることを考えた。この方法は、本研究の当初の予定であるゲノム配列を決定し、標的領域を取得し型別する方法が上手くいかなかった場合の代替法としても応用が効く。さらには、2年目以降に作成予定であったコンティグ配列から対象領域の配列を取得し型別するシェルスクリプトが作成できれば、これらのいずれにも応用が効く。そこで、当初の予定を変更し、1年目は既報の髄膜炎菌のゲノム配列を用いて、既報の各variable numbers of tandem repeats(VNTR)領域を取り出し、そのリピート数を決定するシェルスクリプトを作成した。また、ゲノム解析に用いる菌株のスクリーニングのため、マルチプレックスPCRによる対象領域の増幅に関する条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定である、保有菌株のゲノム解析および新規対象領域の決定には至っておらず、やや遅れている。ゲノム解析において重要な配列データの管理方法を決定することにも役立つこともあり、当初の予定よりもシェルスクリプトの作成を早期に行った。さらに、およびスクリーニングの省労力化を目的として、当初の計画では代替法の予定であったマルチプレックスPCRによる対象領域の増幅とMinIONによる方法を早期に確立するためにマルチプレックスPCRの条件検討を行った。1年目は当初の予定よりもやや遅れているものの、これらのことは次年度以降の計画をより進めることへの足掛かりとなったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
マルチプレックスPCRおよびMinIONによるMLSTおよびMLVAを実施し、スクリーニングを実施するとともに、既報のゲノム配列を用いて、新規MLVA領域の探索を行う。加えて、これら新規領域を含めたシェルスクリプトへとさらに改良する。そののち、保有株のゲノム配列を決定し、新規MLVA領域の再検討および作成したシェルスクリプトの改良を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初1年目に予定していたゲノム解析を2年もしくは3年目に行うことに変更したことにより生じた。残額はゲノム解析およびゲノム解析用の菌株のスクリーニングに使用する。
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