研究課題
本研究の目的は世界の中でカドミウム(Cd)による人体影響が最も激しかった富山県神通川流域のCd汚染地区において、妊婦へのCd曝露が出生時体重に影響するかを明らかにすることである。イタイイタイ病(イ病)は富山県神通川流域に局在して発生した骨症状を中心とする特異的疾患であり、上流の鉱山から排出されたカドミウム(Cd)が原因であることが明らかとなっている。また、Cd曝露が胎児に有害であり、奇形を発生させることは、多くの動物実験が一致して明らかにしている。しかし、人では証明されていない。Cdは胎盤に蓄積し、胎盤はCdの移動を完全には阻止せず、臍帯血中Cd濃度はCd曝露量が多いほど高値であることが報告されている。これらのことは、人でも胎児に影響する可能性を示している。本研究において、Cd曝露の指標として、Cd総摂取量を使用する。Cd総摂取量は米中Cd濃度と詳細な居住歴から、計算式により各人について計算されるものである。我々はCd総摂取量を用いた量-反応関係の研究を、腎障害、イタイイタイ病発生率、生命予後等について多くの研究を実施しており、その有用性を確認している。いままで、我々のグループは、参加者への住民説明会を実施するとともに、参加同意書・問診票の配布と回収を実施してきた。今年度は、回収した問診票の整理を行うとともに、昨年度から引き続き問診票の配布と回収を行った。問診票の内容としては、母親の身長、居住歴、飲酒・喫煙などの生活習慣、米の摂取状況、神通川水の飲水と炊事利用、出生児の性別、体重、出生年月日、妊娠期間、から構成されている。今年度はこれらのデータからデータベースを作成し、解析を実施した。