研究課題/領域番号 |
20K10472
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森保 妙子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (80833186)
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研究分担者 |
金子 聰 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (00342907)
丸山 幸宏 長崎大学, 経済学部, 教授 (30229629)
本西 泰三 関西大学, 経済学部, 教授 (90315218)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 狂犬病対策 / ワクチン / ベースライン調査 / KAPギャップ |
研究実績の概要 |
本研究は、狂犬病対策として最も費用対効果の高い犬のワクチン接種率を向上させるための介入プログラム開発に関する理論的、実証的研究であり、令和2年度は、研究実施計画に基づき、研究基盤の確立とベースライン調査に着手した。調査開始に先立ち、2020年7月にNational Health Research Ethics Committeeで研究倫理審査を受け、承認を受けた。その後、9月からMinistry of Fisheries and Livestock Department of Veterinary Servicesの協力のもと、ザンビア中部のセントラル県シブユンジ地区のムクレイワ村において、ベースライン調査を実施した。調査では、調査員が戸別訪問を行い、犬の飼育の有無とその状況の観察、および、アンケートによる狂犬病に関するKAP(知識・態度・行動)調査を行い、質的・量的情報を収集した。この調査は、狂犬病ワクチン接種率に影響を及ぼす要因を特定し、ワクチン接種率向上に向けて行動経済学の知見を活用した介入プログラムを構築するうえで、不可欠な情報収集である。 ベースライン調査の結果、対象地域における犬の飼育世帯率は45.2%でその7割が番犬目的での飼育であること、また、およそ9割の犬が放し飼いにされていることが判明した。飼育されている犬のワクチン接種率は17.2%であった。KAP調査からは、狂犬病に関する知識(感染経路や病態、処置など)について、住民のおよそ9割が「よく知っている(質問の6割以上正答)」状況であるにもかかわらず、責任ある飼育環境やワクチン接種に関する態度や行動はとられておらず、感染症対策において常に問題となる「KAPギャップ(知識はある、やろうと思う、でも実行できない)」が存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究実施計画に基づき、おおむね順調に進展している。ただし、研究実施計画で、調査対象地としてたザンビア共和国北部県プルング地区イソコ村は、ザンビア国内におけるCOVID-19の高流行地域という理由で調査の許可が下りなかったため、急遽調査対象地をザンビア中部のセントラル県シブユンジ地区ムクレイワ村に変更した。このため、ベースライン調査の実施が、当初の計画より3か月遅れて開始となった。ムクレイワ村での調査は、実施計画通り全世帯を対象に戸別訪問アンケートを行い、①社会経済的地位(SES)と②狂犬病およびワクチン接種に関する知識を調査した。また、村内の犬保有世帯同定し、③飼い主の意思決定バイアス/バランス、リスク選好、時間選好と、④犬の飼育状況を調査した。現在、ベースライン調査から得られたデータを基に、多変量解析の手法を用いて因果分析を行い、ワクチン接種率に影響を及ぼす要因を分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、ベースライン調査から得られたデータを基に、行動経済学的な特性を利用して介入プログラムの構築に取り掛かる。現在、ザンビア側協力者と社会的価値観、習慣、文化、コミュニティ内での貧富差なども考慮して議論を進めており、介入プログラムとして、学校ベースのプログラム構築を考えている。小学校ベースの介入プログラム構築と並行して、対象となる小学校のリストとマッピングを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はCOVID-19の影響で、予定していた国内学会の参加を取りやめ(日本熱帯医学会)、あるいは、オンライン開催への参加へ変更した(行動経済学会)ことにより、上記の次年度使用額が生じた。この分に関しては、令和3年に論文投稿費として使用する予定である。
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