研究課題
本研究は,青少年における健康格差是正メカニズムについての理解を深めるために,学校および地域レベルの集合的効力(collective efficacy: CE)が,青少年の社会経済的不利と健康指標との関連に対して,どのような介在的役割を果たすのかを解明することを目的とした.最終年度は,2021年度に沖縄県全域の全日制公立高等学校を抽出単位として抽出した学校の各年1学級に在籍する高校生を対象に実施した無記名自記式質問紙調査データを用いて,横断分析を行った.クロス分類マルチレベル分析を実施したところ,モデルが収束した健康危険行動は性行動と飲酒行動であった.個人レベル要因を調整した後,学校レベルCEは性行動と予防的な関連を示したが,地域レベルCEは性行動と関連を示さなかった.父母とのコミュニケーションを調整すると,学校レベルCEの関連は有意ではなくなった.社会経済状態と学校・地域レベルCEのクロスレベル交互作用は有意ではなく,性行動の社会経済格差に対するCEの緩衝効果はみられなかった.同様に,学校レベルCEは飲酒行動と予防的な関連を示したが,地域レベルCEの関連はみられなかった.共変量を追加したモデルでは,学校レベルCEの関連が消失した.社会経済状態と学校・地域レベルCEのクロスレベル交互作用は有意ではなく,飲酒行動の社会経済格差に対するCEの緩衝効果はみられなかった.結論として,学校や地域における集団レベルCEが高校生の性行動・飲酒行動を抑制するという文脈効果や社会経済格差を緩衝するという修飾効果はみられなかった.高校生の性行動や飲酒行動の予防には個人レベルの学校集合的効力や家庭要因を考慮する必要がある.
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Hypertension Research
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10.1038/s41440-023-01564-9