研究課題/領域番号 |
20K10474
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
川越 雅弘 埼玉県立大学, 大学院保健医療福祉学研究科, 教授 (00435778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 重症化予防 / 受診勧奨 |
研究実績の概要 |
本年度は、埼玉県の糖尿病性腎症重症化予防事業に参加している市町村国保の健診・レセプトデータの長期分析を主に実施した。また、埼玉県後期高齢者医療広域連合の取組状況に関する情報収集・把握を行った。 【国保データによる長期効果分析】2016年度の受診勧奨対象者のうち、2015~2019年に継続して健診を受診していた国保加入者を、糖尿病の受診につながった群(以下、受診群)と非受診群の2群に分けた上で、健診データや透析移行への影響の差異を検証した。その結果、1) HbA1cに関しては、受診勧奨前年度時点と受診勧奨年度時点で有意差があるが、この有意差は受診勧奨翌年度以降で解消していく、2)BMIに関しては受診群と未受診群で有意差があるが、ともに数値は改善していく、3)eGFRに関しては、年次効果のみ見られるが,受診群・未受診群ともに値は悪化し続けることがわかった。以上の結果から、1)受診につながることで、HbA1cの改善効果が期待できること、2)BMIは受診勧奨の通知を出すだけでも効果があがる可能性があること、3) eGFRに関しては、受診を促すだけでなく、かかりつけ医と腎臓の専門医の連携などを促すなどの対策を講じる必要があると考えた。 【埼玉県後期高齢者医療広域連合の取組状況】入手した情報から、1)2021年度は、1,513人に受診勧奨の文書を送付し、HbA1cが8%以上の高血糖者26人、及びその他の基準該当者127人に対し個別介入を実施していた、2)受診勧奨文書発送後にレセプトで受診が確認できたのは17.4%であったなどがわかった。後期高齢者への受診勧奨の効果を上げるには、他の事業(保健事業と介護予防の一体的実施)などとの連動が必要と考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度:ほぼ予定通り
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今後の研究の推進方策 |
本年度(3年目)は、以下の研究内容を推進する 1.受診勧奨の長期効果分析:受診勧奨群への長期的効果の検証を引き続き行う。 2.人工透析移行群の過去の健診データの経時変化分析(後ろ向き研究):人工透析への移行者を対象に、健診データのレトロスペクティブ分析を行う。 3.受診を促すための対策の検討:後期高齢者への受診勧奨の一方法として、保健事業と介護予防の一体的実施との連携方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
先進地域の調査やインタビューを予定していたが、コロナの影響で調査が実施出来なかった。その分の交通費や謝金が本年度余ったが、これら調査は、次年度に振り替えて行う予定である。
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