研究課題/領域番号 |
20K10476
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
佐伯 圭吾 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60364056)
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研究分担者 |
大林 賢史 奈良県立医科大学, 医学部, 特任准教授 (30596656)
山上 優紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90823956)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 寒冷曝露 / 室温 / 心血管疾患 / 前向きコホート研究 |
研究実績の概要 |
わが国において、冬の外気温低下に関連する過剰死亡数は、喫煙や高血圧症による過剰死亡数に匹敵することから、早急な対策が必要な重要課題といえる冬の外気温低下にも関わらず室内が温暖に保たれる北欧諸国では、南欧諸国より過剰死亡が少ないことから室内寒冷曝露の重要性が指摘されてきたが、室温と健康に関するエビデンスは乏しかった。申請者らは、無作為化比較試験の手法を用いて、暖房による血圧の低下効果や、暖房指示介入が早朝血圧上昇を緩和する効果を報告した。さらに地域在住高齢者を対象に、室温の健康影響に関するコホート研究(平城京スタディ)を立ち上げ、そのベースライン調査の横断解析から室温低値と高血圧、夜間頻尿、入眠困難、血小板高値との横断的関連を示した。室内の温度環境を適切に制御し、寒冷曝露を防ぐことで、心血管疾患や総死亡リスクをどの程度減少できるかについては、大規模で中・長期間の観察に基づく縦断的関連についてのエビデンスが必要となるが、現状ではそのような研究報告はみられない。本研究では、高齢者を対象とする前向きコホート研究から、ベースライン時の住環境の温度と、その後の肥満・動脈硬化の進行、糖尿病の罹患、心血管疾患罹患との縦断的関連を検討する。 令和2年度は、コホート研究参加者2816名に対し、脳血管疾患や虚血性心疾患の新規罹患の有無、罹患時期、受診医療機関に関する調査票を送付し、2662名(94.5%)から回答を得た。またコホート研究参加者が住む奈良県の、日ごとの死亡率と外気温データから、死亡率が上昇する外気温閾値を推測し、その結果から死亡率が上昇する室温閾値を推測する分析を行うため、厚生労働省に人口動態統計データの利用申請を行い、研究を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、コホート参加者2500名の心血管疾患の罹患を調査する予定であったが、予定を上回る対象者のフォローを実施することができたこと。また本研究と関わりの深い分析結果を学会および論文発表できたことから、おおむね順調な進捗と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、コホート研究参加者2500名の心血管疾患の新規罹患について郵送法による調査を行う予定である。さらに当初はベースラインと比較した肥満・動脈硬化の進行、糖尿病の新規罹患に関する健診を900名に対して行う予定であったが、現時点では(2021年5月現在)、新型コロナウィルス感染の流行により、実施が困難な状況である。高齢者に対する新型コロナウィルスワクチン接種と、地域の感染流行の状況をみて研究計画を修正せざるを得ない。2021年度の後半に、十分な感染対策のうえ健診を実施する場合は、健診期間の短縮と感染症対策の観点から、対象者数を当初の予定から大幅に削減した200~300人を予定している。
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