わが国では、冬の外気温低下に関連する過剰死亡数が喫煙や高血圧症による過剰死亡数に匹敵することから、早急な対策が必要な重要課題といえる。冬の外気温低下にも関わらず室内が温暖に保たれる北欧諸国では、南欧諸国より過剰死亡が少ないことから室内寒冷曝露の重要性が指摘されてきたが、室温と健康に関するエビデンスは乏しい。申請者らは地域在住高齢者を対象に、室温の健康影響に関するコホート研究(平城京スタディ)を立ち上げ、そのベースライン調査の横断解析から室温低値と高血圧、夜間頻尿、入眠困難、血小板高値との関連を示した。室内の温度環境の制御によって、心血管疾患や総死亡リスクを減少できるかについては、大規模で中・長期間の観察に基づく縦断的関連についてのエビデンスが必要である。 本研究では、ベースライン時の住環境の温度環境を測定した対象者において、心血管疾患罹患について郵送法による追跡調査を行った。2020年度と2022年には、それぞれ2816名、2737名の対象者に調査票を送付し、90%以上からの回答が得られた。コホート研究参加者において、2010年から2019年に、2189名×7日間および1306名×2日間からなる、のべ17935人・日の室温データと、同期間の都道府県別日別の外気温データと総死亡数のデータを用いた生態学的研究によって、総死亡リスクが上昇する室温閾値の推定を行った。当初は、900人を対象に採血や動脈硬化測定の健診を予定していたが、新型コロナウィルス感染症の流行のため見送らざるを得なかった。そこで郵送法を用いて、医療機関や健診などで行った採血データや生活習慣病(高血圧症、脂質異常症、糖尿病)の有病状況を調査した。
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