研究課題/領域番号 |
20K10477
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
井上 彰臣 産業医科大学, IR推進センター, 准教授 (70619767)
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研究分担者 |
堤 明純 北里大学, 医学部, 教授 (10289366)
可知 悠子 北里大学, 医学部, 講師 (10579337)
江口 尚 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (50722146)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 尺度開発 / 信頼性 / 妥当性 / 心理社会的安全風土 / メンタルヘルス / 生理指標 / 前向きコホート研究 / 産業保健 |
研究実績の概要 |
本研究は,海外で用いられている「心理社会的安全風土」(psychosocial safety climate:PSC)の評価尺度(PSC-12)を邦訳し,その信頼性・妥当性を検討するとともに,邦訳したPSC-12日本語版を用い,PSCが労働者の心身の健康(精神的健康および冠動脈疾患の危険因子となる各種生理指標)に及ぼす影響や仕事の要求度による労働者への健康影響に対する緩衝効果を明らかにすることを目的としている。3年計画の1年目である今年度は,インターネット調査会社に登録している労働者2,200名(再テスト信頼性の検討を目的とした2週間後の追跡調査は1,400名)を対象に,邦訳したPSC-12とその関連指標を含む自記式調査を行い,PSC-12日本語版の信頼性・妥当性の検討を行った。 その結果,PSC-12日本語版のCronbachのα係数は0.97,級内相関係数(1,1)は0.69であり,高い内的整合性と良好な再テスト信頼性を有することが示唆された。また,PSCの理論に基づく4因子構造を想定した確認的因子分析では良好なモデル適合度を示たこと(goodness of fit index[GFI]=0.97,adjusted goodness of fit index[AGFI]=0.94,comparative fit index[CFI]=0.99,Tucker-Lewis index[TLI]=0.98,root mean square error of approximation[RMSEA]=0.06),その他の関連指標(仕事の要求度,仕事のコントロール,上司・同僚の支援,心理的ストレス反応,ワーク・エンゲイジメント,職務満足度など)との間に海外の先行研究と概ね同様の関連が認められたことから,PSC-12は良好な因子的妥当性,収束的妥当性を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,PSC-12日本語版を作成するとともに,インターネット調査を実施し,信頼性・妥当性を検討できたことから,順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
労働者を対象にPSC-12を用いた疫学調査を実施するため,調査対象企業を選定し,調査実施の了承を得る。その後,調査票のひな型を作成して,少数の労働者に対して回答を依頼し,意見聴取をした上で,調査票の最終版を作成する。対象者に配付する説明文書および同意書を作成し,産業医科大学倫理委員会から本研究実施の承認を得る。データ収集後,データ入力,クリーニング,統計解析を行い,調査結果の概要を調査対象企業に報告するとともに,研究成果を国内外の学会ないし学術雑誌に報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に研究成果報告を行うことができなかったため,未使用額が発生した。繰越金は主に研究成果報告にかかる費用(学会参加費および旅費,論文執筆にかかる英文校正費や論文掲載料)として使用する予定である。
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