研究課題/領域番号 |
20K10482
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
川合 紗世 愛知医科大学, 医学部, 講師 (60567014)
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研究分担者 |
奥田 真珠美 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (40531091)
垣内 俊彦 佐賀大学, 医学部, 助教 (50737864)
王 超辰 愛知医科大学, 医学部, 助教 (00758063)
菊地 正悟 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40224901)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ピロリ菌 / 胃がん / 経済分析 / 若年期 / H. pylori / 累積罹患リスク / 既存統計資料 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、若年期におけるピロリ菌感染防止の胃がん予防への有効性について経済面からの議論の根拠となる基礎データを構築することである。ピロリ菌感染の次世代への継承を防止するために若年期にピロリ菌感染検査および除菌を行うことで期待される、将来の胃がん罹患率の減少効果をモデル化し、経済評価を行う。 2020年度は経済分析に適用する条件を決定するための基礎データを得た。 具体的には、日本における生年別ピロリ菌感染率の推計値(Wang C, et al. Sci Rep. 2017)を基に、地域がん登録・高精度地域実測値:がん罹患年次推移データ(1985年~2012年)と人口動態統計がん死亡データを用いて、ピロリ菌感染の有無で出生からある年齢に達するまでの胃がん累積罹患リスクにどれくらいの違いがあるかを推計した。高齢者では萎縮性胃炎の進行によりピロリ菌が自然消失する場合があるため、ピロリ菌感染率がピークアウトする年より以前の生年に対して感染率に幅を持たせたシミュレーション解析により胃がん累積罹患リスクの推計値を求めた。この結果をまとめた原著論文は現在投稿中である。また、この解析に先立って実施したピロリ菌感染の有無による胃がん累積罹患リスクの各種条件別の推計結果は日本ヘリコバクター学会学術集会(浜松)の主題演題セッションで基調講演として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生年別のピロリ菌感染率を考慮した日本人の胃がん長期累積罹患リスクの推計は終了したが、当初実施を予定していた、親がピロリ菌感染者であることが子供のピロリ菌感染率に与える影響の推計に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、一般健常人の成人男女を対象としたコホート研究データを用いて、生年別のピロリ菌感染率を調査する。続いて親がピロリ菌感染者であることが子供のピロリ菌感染率に与える影響を推計する。また、その間、研究分担者を通じて丹波篠山市および佐賀県の若年者へのピロリ菌感染対策事業によって得られたピロリ菌感染率や除菌成績、事業費負担額等のデータの収集を行う。得られたデータを用いて、18歳までに除菌に成功した場合の将来の胃がん罹患率を年齢階級別にシミュレーションする。 その後、公費負担で若年者にピロリ菌感染検査・除菌治療を行うことによる胃がん罹患率減少効果についての費用効果分析を行い、さらに胃がん検診および胃がん治療に要する医療費と比較した費用便益分析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により学会出張が大幅に減り、分担研究者との対面での打ち合わせができず交通費が不要になったため。 次年度使用額については、今後必要に応じてオンライン会議環境の整備や論文投稿に係る費用として活用する予定である。
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