研究課題/領域番号 |
20K10486
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
水越 厚史 近畿大学, 医学部, 講師 (50520318)
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研究分担者 |
奥村 二郎 近畿大学, 医学部, 教授 (70211133)
東 賢一 近畿大学, 医学部, 准教授 (80469246)
中間 千香子 関西医科大学, 医学部, 助教 (10862344)
北條 祥子 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 名誉教授 (90005033)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境過敏症 / 環境因子 / 環境バリア / 質問票 |
研究実績の概要 |
環境過敏症は、通常、問題にならない僅かなレベルの化学物質への曝露や物理的影響などの環境因子により、全身の様々な症状が生じる病態である。近年、生活環境は急速に変化し、コロナ禍も相まって、環境過敏症の発症や病態に関係する環境因子は多様化している。そこで本研究では、環境過敏症に関係する環境因子を把握するための質問票を開発し、質問票を用いた実態調査を行うことで、環境過敏症の症状を訴える人の割合や発症・症状発現に関係する環境因子、日常生活における環境バリアを明らかにすることを目的としている。 本年度は引き続き文献調査を基に質問票を精査し、環境過敏症の発症と病態の機序を明らかにすることに主眼を置いて、発症の原因(きっかけ)と症状を誘発する環境因子について明確に区別して回答が得られるように改変した。また、環境過敏症の発症予防に関する最新の研究の情報を集約するため、日本臨床環境医学会および室内環境学会の環境過敏症分科会と生活環境と健康研究会の主催で合同研究会を2回オンラインにて開催し、研究会での情報、議論を質問票に反映させた。上記の作業から派生して、環境過敏症に関する国際共通の質問票やそれらを用いた調査研究、環境過敏症の定義や仮説についてまとめた総説が日本自律神経学会の学会誌「自律神経」に掲載された。また、次年度発刊の室内環境学会誌「室内環境」に特集「マルチ異分野の研究者からみた室内環境と環境過敏症:科学的究明と発症予防を目指して」の企画をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、作成した質問票を用いた研究計画を具体化し、調査の準備を行った。並行して環境過敏症に関する最新の研究について情報を収集し、その内容をまとめ、総説として報告した。既往研究の調査、まとめについては順調に進捗している。調査した最新の情報については質問票にフィードバックし、質問票の項目の追加、修正を行った。 次に、調査を開始するにあたり、研究計画を具体化して作成し、当該研究について所属研究機関にて倫理審査を申請し、承認された。また、環境過敏症の支援団体に質問票を配布していただく内諾を得て調査の準備が整った。年度内の質問票配布と回答のまとめを目指していたが、引き続く新型コロナ感染症の感染拡大防止のための各種制限により、調査を開始できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は完成した質問票を用いて、環境過敏症の症状を訴える患者に対して調査を行う。環境過敏症の支援団体等の市民団体に依頼し、所属する会員に質問票を配布してもらい、返送していただいた方を対象とする。目標症例数は検出力を考慮して450例とする。本調査での質問票は、環境過敏症の発症原因と推測される環境因子や症状誘発に関連すると考えられる環境因子についての質問を含み、選択肢から選ぶと同時に選択肢にないものについては自由記載欄への記入をお願いするようになっている。自由記載欄に記入された文章については、テキストマイニングにより頻度の高いものを抽出し、環境過敏症の発症原因や症状誘発に関連する環境因子候補として、選択項目に追加する。また、それぞれその頻度からこれらの環境因子の重要度を把握する。質問票に含まれるその他の質問項目(年齢、性別、環境過敏症の種類、発症時期、慢性疾患の有無、症状の種類、強さ)の情報と環境過敏症関連環境因子との関係性についても統計解析し、これらの環境因子の特徴を明らかにする。 次に、本調査結果に基づき、質問票を選択式の項目に再編し、無作為抽出された3000名程度の一般人にwebにより回答を依頼する。この調査により、環境過敏症の症状を訴える人の割合やそれぞれの環境因子の相互関係を把握する。さらに、自覚症状との関連、発症・症状発現の環境因子、環境バリアについても定量的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内に調査を開始することができず、人件費・謝金を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度の調査に使用する予定である。
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