研究課題/領域番号 |
20K10486
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
水越 厚史 近畿大学, 医学部, 講師 (50520318)
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研究分担者 |
奥村 二郎 近畿大学, 医学部, 教授 (70211133)
東 賢一 近畿大学, 医学部, 准教授 (80469246)
中間 千香子 関西医科大学, 医学部, 助教 (10862344)
北條 祥子 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 名誉教授 (90005033)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環境過敏症 / 環境因子 / 環境バリア / 質問票 |
研究実績の概要 |
環境過敏症は通常では症状が出ないレベルの様々な環境因子に対して、全身の様々な症状が発現する健康障害と考えられている。関係がある可能性のある潜在的な環境因子を見つけ出し、その実態を把握することが必要である。本研究では、環境過敏症の発症・症状発現に関係する環境因子、日常生活における環境バリアを明らかにすることを目的とし、これらを把握するための質問票(「環境過敏症に関する質問票」)を開発した。そしてこの質問票を用いて、環境因子により症状が出ることのある人を対象としてアンケート調査を行った。2022年6月に有訴者が所属する2団体に質問票を1550部送付し、会員に配布してもらい、437部の返送があった(回収率28.2%)。今年度は、先着の150名のうち同意が有り、症状が有る138名を対象とし、化学物質、電磁波、その他のものへの不耐の発症因子(きっかけ)について傾向を把握した。回答者は男性20名(14.5%、平均±標準偏差:57±12歳、範囲:32-79歳)、女性118名(85.5%、59±11歳、33-86歳)であり、女性が多く、平均年齢は50代後半という傾向があった。ほとんどの人(97.8%)は化学物質によって症状が出ると回答し、化学物質と電磁波の両方によって症状が出る人が多く(59.4%)、化学物質と電磁波とその他のものによって症状が出る人は27.5%、電磁波のみの人は2.2%であった。化学物質不耐になった人は1990年頃から増加し、発症因子は「自宅の新築・リフォーム」(29.6%)と「柔軟仕上げ剤の香り」(23.7%)が多く、近年、「柔軟仕上げ剤の香り」の増加傾向があった。電磁波不耐の人は1995年頃から増加、発症因子は「近隣からの電磁波曝露」(27.1%)が多いという結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、遅れていたアンケート調査を実施し、回答を得ることができた。使用した質問票の質問項目数は多く、自由記載欄も多くあるため、データベース化に時間を要している。今年度は傾向を把握するため、発症因子(きっかけ)に関する質問の解析を部分的に行った。全体の結果の解析にはまだ時間が必要であるため、1年の延長申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、質問票を用いた調査を行い、発症因子(きっかけ)に関する質問の解析を部分的に行った。今後は未集計のデータを追加してデータベースを完成させる。質問票の自由記載欄の文章については、テキストマイニングにより頻度の高いものを抽出し、関連する環境因子候補として、項目に追加する。そして、項目化された環境因子について、それぞれその頻度からこれらの環境因子の重要度を把握する。また、質問票に含まれるその他の質問項目(年齢、性別、環境過敏症の種類、発症時期、慢性疾患の有無、症状の種類および強さ)の情報と環境過敏症に関連する環境因子との関係性について統計解析し、これらの環境因子の特徴を明らかにする。本調査の結果に基づき、環境過敏症のきっかけとなる、あるいは、症状を引き起こす原因となる可能性のある潜在的な環境因子を選び出し、環境過敏症の発症予防およびバリアフリー環境実現のために必要な知見としてまとめる。また、結果に基づき、質問票の項目を近年の実態に適合したものに再編する。以上のプロセスを今後、持続的に環境過敏症に対応できるような質問票の確立方法および調査の枠組みとして提案をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内の出版ができなかった論文について、論文掲載料として使用する予定である。
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