研究課題/領域番号 |
20K10491
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研究機関 | 公益財団法人結核予防会 結核研究所 |
研究代表者 |
河津 里沙 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 臨床・疫学部, 主任研究員 (10747570)
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研究分担者 |
大角 晃弘 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 臨床・疫学部, 部長 (30501126)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 外国人 / 潜在性結核感染症 / 治療成績 / 服薬支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は外国出生者のLTBI治療に対する認識や服薬支援におけるニーズを明らかにし、日本が入国時LTBIスクリーニングの導入を検討する際の有用なエビデンスの構築を目指すことである。そのために(ア)外国出生LTBI患者において治療中断に影響を与えるリスク要因に関する調査、(イ)外国出生LTBI患者において治療開始・継続・完了に至る各過程における、保健所・患者視点のニーズ調査、(ウ)外国出生者に対するLTBIスクリーニングを実施している先進国(英国、米国、豪州等)における患者教育や服薬支援の事例の検証、を予定している。一年目は(ア)の目的達成を目指し、結核登録者情報システムにおける外国出生LTBI患者の推移と治療成績の分析を行った。その結果、外国出生LTBI患者の数、及び全LTBI患者数における割合は増加傾向にあり、2018年は963人だった(13.0%)ことが明らかになった。日本・外国出生ともに主な化療内容はINH単剤だったが、RFP単剤の割合は外国出生者の方で高かった(5.5% vs. 1.8%, p<0.001)。治療成績において、日本出生LTBI患者と比較して外国出生者の治療中断割合は大きな差がなかったが、転出割合が有意に高かった(8.3% vs. 1.5%, p<0.001)。ロジスティック回帰分析の結果、外国出生LTBI患者における転出のリスク要因として職業が「日雇い」「不明」が示唆された。これらの結果は論文化し、BMC Infectious Diseases (Kawatsu et al, 2021. 21, 42 (2021). https://doi.org/10.1186/s12879-020-05712-1)にて掲載された。
このほかに、上記(イ)の準備として保健所・患者を対象としたアンケート調査の作成、準備等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症の世界的流行の影響で、保健所業務がひっ迫されたため、保健所に対するアンケート調査の開始は延期せざるを得なかった。一方で、結核登録者情報システムのデータの分析を進め、論文化まで達成することができた。更に追加の研究活動として、1)日本における外国出生者を対象とした結核、潜在性結核感染症に関する情報提供の在り方に関する調査、2)小児潜在性結核感染症に関する疫学状況に関する調査、を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年中には保健所・患者を対象としたアンケート調査、及びインタビュー調査を開始、終了する予定である。更に、上記1)日本における外国出生者を対象とした結核、潜在性結核感染症に関する情報提供の在り方に関する調査、2)小児潜在性結核感染症に関する疫学状況に関する調査、に関しては国内外の学会発表にむけて準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大の影響で、予定していた研究活動の一部を延期せざるを得なかったため(保健所・患者対象のアンケート調査)。特に患者アンケート調査はオンライン調査を予定しているため、オンラインアンケートの作成及び謝礼に関する使用予定額が未執行となった。
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