研究課題
平成9年から「生活習慣病とそれに続く心血管事故の予防を目的としたコホート研究」を行っており、平成25 年の調査時には1804名のDNAを同意の下保存した。また、同時に出生時体重や生活習慣病の既往歴を含む生活習慣アンケートを実施した。本研究では、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常のいずれの既往歴も持たない517名(男性412名、女性105名、35歳から59歳、平均50.7±6.5歳)のDNAメチル化を測定した。ターゲットとした分子はATP-binding cassette protein G1(ABCG1)であり、この分子はHDLコレステロールの生成過程で重要な役割を果たしていることが知られている。また、ABCG1遺伝子のDNAメチル化が、心血管アテローム性動脈硬化症の早期徴候である頚動脈内膜中膜肥厚と関連するとの報告がある。2021年度は、胎内環境の指標である出生時体重とABCG1遺伝子のDNAメチル化率との関連を検討した。ABCG1遺伝子のDNAメチル化率(%)は、最小値50.9、25パーセンタイル値65.5、中央値68.3、75パーセンタイル値70.6、最大値83.3、平均値68.0、標準偏差3.9であった。出生時体重を2500グラム未満、2500グラム以上3000グラム未満、3000グラム以上に分けると、メチル化率の平均(標準偏差)は順に68.7(3.5)、67.7(4.1)、68.2(3.8)であった(一次の傾向性p値=0.849、二次の傾向性p値=0.093)。並行して、平成9年度からのデータの整理に努めた。
2: おおむね順調に進展している
保存したDNAを使って、生活習慣病に関連する遺伝子のメチル化について解析を進めている。2020年度はATP-binding cassette protein G1(ABCG1)に関して分析し、従来から研究を進めている出生時体重との関連を検討した。その結果、出生時体重が2500グラム未満の成人(35歳から59歳)では、DNAのメチル化率が高い傾向がみられた。
引き続き、保存したDNAを使って、生活習慣病に関連する遺伝子のメチル化について解析を進めていく。2020年度はATP-binding cassette protein G1(ABCG1)に関して分析したが、さらに他の遺伝子のメチル化についても解析を進めていく。また、平成9年から「生活習慣病とそれに続く心血管事故の予防を目的としたコホート研究」において、集積しているデータを整理し、経時データとして分析できるデータセットの作成に努める。
研究スペースの移動により、予定していた統計解析ソフトや解析のためのパソコン等の購入が十分にできなかったため、次年度使用額が生じた。2021年度における研究環境整備に使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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10.3390/ijerph17217971
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