研究課題
平成9年から「生活習慣病とそれに続く心血管事故の予防を目的としたコホート研究」を行っており、平成25 年の調査時には1804名のDNAを同意の下保存した。また、同時に出生時体重や生活習慣病の既往歴を含む生活習慣アンケートを実施した。本研究では、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常のいずれの既往歴も持たない523名(男性418名、女性105名、35歳から59歳、平均50.7±5.9歳)のDNAメチル化を測定した。ターゲットとした分子はsuppressor of cytokine signaling 3(SOCS3)であり、この分子はサイトカインシグナル経路を抑制的に制御し、免投制御機構においても主要な分子であることが知られている。また、SOCS3 は食欲抑制とエネルギー消費亢進をもたらす重要なアディポサイトカインであるレプチン受容体に会合し、そのシグナルを抑制することも知られ、レプチン抵抗性やインスリン抵抗性を改善する有力な標的遺伝子であると言われている。2022年度は、胎内環境の指標である出生時体重とSOCS3遺伝子のDNAメチル化率との関連を検討した。SOCS3遺伝子のDNAメチル化率(%)は、最小値39.2、25パーセンタイル値76.5、中央値79.6、75パーセンタイル値81.9、最大値90.5、平均値79.2、標準偏差4.8であった。性別、年齢とメチル化率との間には有意な関連はみられなかった。出生時体重を2500グラム未満、2500グラム以上3000グラム未満、3000グラム以上に分けると、メチル化率の平均(標準偏差)は順に79.3(4.2)、79.0(4.3)、79.2(5.2)であり、群間に統計学的有意差はみられなかった。並行して、平成9年度からのデータの整理に努めた。
2: おおむね順調に進展している
保存したDNAを使って、生活習慣病に関連する遺伝子のメチル化について解析を進めている。2021年度はsuppressor of cytokine signaling 3(SOCS3)に関して分析し、従来から研究を進めている出生時体重との関連を検討した。その結果、DNAのメチル化率に関して、出生時体重との関連はみられなかった。コホート開始段階からのデータ整理に関しても、逐次進めている。
引き続き、保存したDNAを使った、生活習慣病に関連する遺伝子のメチル化について解析を進めていく。2021年度はsuppressor of cytokine signaling 3(SOCS3)に関して分析したが、さらに他の遺伝子のメチル化についても解析を進めていく。また、平成9年から「生活習慣病とそれに続く心血管事故の予防を目的としたコホート研究」において、集積しているデータを整理し、経時データとして分析できるデータセットの作成に努める。
翌年度分と合わせて、統計分析ソフトや研究用パーソナルコンピューターなど研究環境整備に使用する予定である。
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Journal of Epidemiology
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10.2188/jea.JE20210128