研究対象自治体住民の国民健康保険での被保険者番号と後期高齢者医療制度での被保険者番号との対応表を作成し、コロナ禍より前の連続する2暦年における医療保険者が実施した健康診査の受診状況、そしてその2連続暦年とその翌暦年を含めた3暦年における医療保険者からの医療の給付状況を収集した。 2年間に1回以上健康診査を受診した2201人を、2暦年連続受診群1288人、1年目のみ受診群395人、2年目のみ受診群518人の3群に分類した。健康診査を受診した暦年月とその後11か月間を健康診査受診の効果が及ぶ期間(有効期間)、受診した暦年月の前12か月間および受診した暦年月から数えて12か月目以後を健康診査受診の効果が及ばない期間(非有効期間)とみなした。そして3つの群別に、有効期間と非有効期間それぞれにおける、その群の所属者一人1か月あたり医療費を算出した。 非有効期間と有効期間の両方を設定できた1年目のみ受診群と2年目のみ受診群を併せた913人(1暦年のみ受診群)について、有効期間と非有効期間との間で医療費を比較すると、外来はほぼ同額(有効期間/非有効期間=1.04)だが、入院が有効期間の方で高額(同1.40)で、外来と入院の合計も有効期間の方で高額(同1.18)であった。 一方、2暦年連続受診群の有効期間と1暦年のみ受診群の有効期間との間で医療費を比較すると、2暦年受診群の方が低額であった(外来では0.40倍、入院では0.24倍、外来と入院の合計では0.33倍、ただし、いずれの比較でも2群の年齢構成の違いを非考慮)。 健康診査受診の医療費低減効果は、受診状況が異なる群の間での比較では示唆されたが、同一人についての健康診査の効果が及ぶ期間と及ばない期間との比較では示されなかった。健康診査受診状況に基づく群間比較、そして同一人についての異なる期間の比較の両方を実施してその効果を検証する必要がある。
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