研究課題/領域番号 |
20K10503
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
秦 淳 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00448432)
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研究分担者 |
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心房細動 / 高感度CRP / NT-proBNP / リスクスコア |
研究実績の概要 |
(1)追跡調査およびデータセットの整備:2020年までに行われた毎年の健診結果および追跡調査の資料を用いて、久山町研究における心房細動の発症に関するデータベースを整備した。 (2)心房細動のバイオマーカー研究:心筋傷害のバイオマーカーであるB型ナトリウム利尿ペプチド前駆体N末端(NT-proBNP)と心房細動の発症リスクとの関連を検討した。2002年の久山町健診受診者3126名を10年間追跡した成績を用いて検討したところ、NT-proBNPの血中濃度が高くなるとともに心房細動の発症リスクが有意に上昇した。また、炎症のバイオマーカーである高感度C反応性蛋白(hs-CRP)についても検討した。1988年の久山町健診受診者2510名を24年間追跡した成績より、hs-CRPの血中濃度が高くなるとともに心房細動の発症リスクが有意に上昇することを確認した。以上の成績は査読付き英文専門誌に投稿し、出版された。 (3)心房細動発症リスク予測モデルの開発:今後、心房細動の発症にかかわるバイオマーカーや遺伝要因が明らかとなり、発症予測に対する有用性を明らかにするためには、既知の危険因子と心房細動発症リスクとの関連を理解しておく必要がある。そこで、1988年の久山町健診受診者2442名を24年間追跡した成績を用いて、既知の危険因子を用いた心房細動発症のリスク予測モデル(リスクスコア)を開発した。その結果、年齢、性別、収縮期血圧、腹囲、推算糸球体濾過量、心雑音、心電図上のR波増高、心房細動以外の不整脈の8項目からなるリスク予測モデルは、良好なリスク判別能を有していることを明らかとした。以上の成績は査読付き英文専門誌に投稿し、出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要な統計解析用のデータベースが整備することが出来た。 研究課題のテーマの一つであるバイオマーカー研究について、NT-proBNPとhs-CRPに関する2本の論文を公表することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で作成されたリスク予測モデルを用いて、心房細動のバイオマーカー(NT-proBNP、hs-CRP)が心房細動発症のリスク予測の精度向上に有用であるかどうか、C統計量などを用いて検討する。 保存血清を用いて測定した他のバイオマーカーについても、心房細動発症との関連を検討する。 全ゲノムにわたる遺伝子多型データを有する2002年のコホートを用いて、既報の心房細動関連遺伝子が日本人地域住民における心房細動の発症リスクと関連しているかどうかを検証し、リスク予測に有用かどうか評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、参加を予定していた学会の多くがオンライン開催となり、旅費を支出する必要がなかった。健康診断や追跡調査も規模を縮小して実施したため、必要な経費が想定より小さくなった。 次年度使用額は2021年度分の助成金と合わせて使用し、主に追跡調査に必要な物品の購入や人件費に充てる予定である。
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