研究課題/領域番号 |
20K10506
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
嶽崎 俊郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50227013)
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研究分担者 |
指宿 りえ 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90747015)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HTLV-I / 全死亡リスク / コーホート研究 / 炎症性遺伝子多型 / TNF-α / IL-10 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、HTLV-Iキャリアにおける高い全死亡リスクに対する防御要因をコーホート研究において明らかにすることである。初年度は、新学術領域研究「コホート・生体試料支援プラットフォーム」の支援により疫学情報と遺伝子多型情報の提供を受け、HTLV-Iと全死亡リスクとの関連、および遺伝子多型との関連に関して解析を行った。 解析対象者は、2005-2008年に鹿児島県あまみ島嶼地域、2012年に同県本土の農村地域で行われた住民健診と特定健診に参加し、HTLV-I抗体の有無が判明している7,105名(男性2,903名、女性4,202名)である。死亡と転出は2019年まで、がん罹患は2016年までの追跡情報が用いられた。解析は、coxの比例ハザードモデルを用い、交絡要因を調整した上で、ハザード比(HR)と95%信頼区間を見積もった。 HTLV-I抗体陽性者は458名(6.5%)、男性5.6%、女性7.0%であった。HTLV-I陽性者における全死亡のHRは1.24 (0.77-2.00)、全がん罹患で0.79 (0.47-1.30)であった。炎症性遺伝子多型TNF-α 1031T/C、IL-10 819T/C、NF-κB1 94ATTG ins/delの解析結果が得られた3,134名を対象に全死亡のHRを見積もったところ、TNF-αのCC & CT群で2.60(1.05-6.41)、TT群で1.12(0.55-2.31)、相互作用(p=0.166)、IL-10のAA群で0.94(0.35-2.54)、AG & GG群で1.87(0.97-3.58)、NF-κB1のins/ins群で1.54(0.69-3.44)、ins/del & del/del群で1.32(0.62-2.79)であり、炎症に関わる個人差がHTLV-Iと全死亡リスクとの関連に影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、新学術領域研究「コホート・生体試料支援プラットフォーム」の支援により疫学情報と遺伝子多型情報の提供を受け、初年度に計画していたHTLV-Iキャリアにおける全死亡リスクに関わる環境要因と遺伝子多型の解析が行えた。 次年度のHLAを含めた遺伝子多型の解析を拡大する準備として、「コホート・生体試料支援プラットフォーム」において、コーホート全対象者のDNA抽出が行われ、支援との良好な連携のもと、遺伝子多型の解析をさらに進められる準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
すでに抽出してあるDNAの提供を受け、研究実施計画に則り、HLAハプロタイプの遺伝子多型と、炎症性サイトカインに関する追加の遺伝子多型の解析を行い、HTLV-Iと死亡リスクとの関連に関して、遺伝子多型との相互作用、および環境要因との関係を解析し、危険要因と防御要因を明らかにする。明らかになった結果に関しては、学会発表と論文作成を進める。
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