研究課題
本研究の目的は、1つ目に「福島県の東日本大震災の避難者と非避難者における認知症発症について、震災前後の動向を明らかにすること」、2 つ目に、「福島県における東日本大震災の避難者と非避難者の認知症発症のリスク要因とその寄与割合についてその動向を明らかにすること」 、そして3つ目に、「東日本大震災の被災地区住民に対する認知症発症予防のためのポジティブな要因の複合的介入の認知症予防効果を検証すること」である。本年は、東日本大震災前後10年間における循環器疾患及び認知症危険因子のトレンドを検討することを目的とした。【方法】対象は、特定健診に参加した40歳~74歳の福島県住民333,225(2008)~439,683(2017年度)人。メタボリックシンドローム割合の経年変化を男女別、年齢階級別、地域別に算出し、ポアソン回帰分析を用いて震災前(2008-10年度)と比較した。震災後の有病率比と、避難地域から最も遠い会津地域に比較した中通り、浜通り、避難地域(指定12市町村)の各有病率比(95%信頼区間)を年度ごとに算出した。さらに変曲点回帰分析を用いて、各年度における変曲点の有無と年間変化割合(APC)を算出した。【結果】メタボリックシンドロームの割合は、男女とも、各地域において震災発生以降有意に上昇しており、特に避難地域で顕著であった。また、震災後は会津地域に比べて避難地域において有病率比が高かった(図1)。これらの関連は、特に高齢群で顕著であった (p for interaction <0.01)。さらに、変曲点回帰分析の結果、避難地域のみ2012年に有意な変曲点が認められた(p=0.028)。【考察】震災前に比べて震災後の福島県内のメタボリックシンドローム割合が特に避難地域で高く、その状態が長期的に継続していることが明らかになった。今後その他のリスク因子、循環器疾患及び認知症発症について確認することが必要である。
2: おおむね順調に進展している
現在、本研究の目的の2つ目である「福島県における東日本大震災の避難者と非避難者の認知症発症のリスク要因とその寄与割合についてその動向を明らかにすること」について、メタボリックシンドローム、循環器疾患、高血圧、飲酒、喫煙、運動、等の生活習慣の震災前後の動向を調査している。認知症のデータがそろい次第、さらに1つ目、2つ目の内容を詳細に検討していく予定である。さらに3つ目の目的については、介入研究であり、コロナ渦の現在は開始できていない。可能になり次第開始する予定である。
本研究の1つ目、2つ目の目的、「福島県の東日本大震災の避難者と非避難者における認知症発症について、震災前後の動向を明らかにすること」について、データがそろい次第詳細な解析を進める予定である。また、3つ目の目的については、介入研究であり、コロナ渦の現在は開始できていないため、可能になり次第開始する予定である。
新型コロナウイルス感染防止のため、介入研究を実施することができず、計画していた使用額に達しなかった。可能になり次第介入研究を開始する。
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