研究課題/領域番号 |
20K10511
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 教授 (40224711)
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研究分担者 |
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296543)
苣田 慎一 杏林大学, 医学部, 学内講師 (90639791)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 微小粒子状物質(PM2.5) / ホルター心電図 / 循環器機能 / 不整脈 |
研究実績の概要 |
PM2.5の短期曝露が循環器機能に何らかの影響を及ぼすか調べるため、不整脈発生頻度の検討を行った。対象は循環器内科外来を動悸・めまい等の訴えや経過観察のため受診し、24時間ホルター心電計を装着した患者で、診療録から性別、年齢、体重・身長、居住地、職業、既往歴、喫煙・飲酒歴、服薬等の情報を収集した。24時間心電図解析サマリーを基に、基礎心疾患がなく不整脈のみ認めた者、すなわち約30拍/時以下の期外収縮で治療を要しない患者537(男性293)名を解析対象とした。患者居住地最寄りの大気測定局で計測されたPM2.5日平均値と気象データを収集し、各患者受診年月日の1週間前より遡って抽出した各データを連結し、検査前日及び検査前一週間の平均PM2.5値と心室/上室性期外収縮の発生頻度(以下、不整脈発生率)との関係を調べた。 対象者(平均年齢59歳)の43%は心電図で異常が見られず、総観察時間中1%以上不整脈が発生した者は29%であった。患者居住地周辺における心電図検査前日のPM2.5は平均11.7(範囲1.8-36.3)μg/m3であり、不整脈発生率と検査前日のPM2.5濃度との間に有意な正相関が認められた。平均PM2.5値を3分割(区分7.5,15μg/m3)し、不整脈発生率を比較したところ、各群の平均が1.9, 2.1, 3.5%となり、一元配置分散分析と傾向性検定で有意差が認められた。検査前1週間の平均値では関連は見られなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果、不整脈発生率1%以上となるオッズ上昇に関わる有意な因子は、性別、有職(常勤)、循環器疾患の既往(高血圧・動脈硬化症含む)、前日のPM2.5濃度及び降水量であった。比較的リスクの低い不整脈の発生増加には、性別、既往歴、就労等の患者背景因子の他、短期PM2.5濃度や気象状況が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
診療録情報と循環器内科受診患者のホルター心電図サマリーおよび心血管イベントに関する5年間分のデータ抽出作業が終了し、大気汚染物質データや気象データを含め入力とデータ・クリーニング、および対応データの統合が行われた。 連結された各種データ間の関連性について、傾向性検定や多重ロジスティック分析等を行って検討し、得られた研究成果の一部を学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
患者居住地区における受診当該年度のPM濃度勾配地図を作成・比較し、さらに2019年4月以降の心電図検査データの収集を引き続き行うか検討する。大気中の環境汚染物質濃度の経年変化を観察し、Covid-19の流行に起因する現象及び交絡影響を吟味した上で、循環器系急性イベントや原因不明の軽度不整脈などへの微小粒子状物質の関与を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大予防のため、研究打ち合わせ会議はオンラインで実施し、研究補助員への依頼業務を最低限に抑えたため、旅費や会議費、人件費・謝金の使用額が見込みより大幅に少なくなった。参加予定であった国際学会にも参加しなかったため、次年度使用額が生じた。
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