研究課題
エピジェネティクス機構の1つであるDNAメチル化は疾病の発症・進展に重要な役割を果たすことが示唆されているが、DNAメチル化の変動に影響を与える要因については検討がほとんどされていない。本研究の目的は、一般住民を対象として縦断的な研究を行うことにより、白血球DNAメチル化レベルの変動に影響する生活習慣などの要因を明らかにすることである。令和2年度は縦断的解析を実施するために、健診受診者を対象として、平成27年度も受診している者を選出し、白血球ゲノムの抽出、各種遺伝子のDNAメチル化レベルの測定を行い、縦断的データベースを作成する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響により健診が中止となり、当初の予定を変更せざる負えなくなった。そこで、令和2年度は、平成27年度に抽出した白血球ゲノムを用いてDNAメチル化を測定する遺伝子を増やし、白血球DNAメチル化率と生活習慣に関する断面的な解析の実施にとどめた。生体内酸化ストレスと関与するThioredoxin-interacting protein(TXNIP)遺伝子と喫煙習慣との関連について調査を行い、喫煙習慣を有する者ではTXNIP遺伝子のメチル化率の低下を認めた(PLOS ONE. 2020;15(7):e0235486.)。また、HDLコレステロールの形成に重要な役割を果たす脂質トランスポーターであるATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)遺伝子と食事による脂肪酸摂取量との関連について解析を行い、ω3系不飽和脂肪酸の摂取量とABCA1遺伝子のDNAメチル化率との間に有意な負相関を認めた(Nutrition. 2021;81:110951. )。さらに各種遺伝子と生活習慣との関連について横断的解析をすすめていく。
3: やや遅れている
新型コロナウイルスの影響により対象者を抽出する予定であった健診が中止となり、当初の予定を変更せざる負えなくなった。
今後は縦断的解析データベースの構築をめざし、令和3年度に実施される健診の受診者から検体・データの収集を行い、DNAメチル化率の解析を実施していく予定である。解析結果については関連学会等で発表を行い、さらに論文化し学術雑誌へ投稿する。
当初予定されていた健診が新型コロナウイルスの影響で中止となり、研究計画に影響が生じたためである。今後は縦断的な解析データ作成に向け研究を推進し、試薬類の購入を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
Nutrition
巻: 81 ページ: 110951
10.1016/j.nut.2020.110951
PLOS ONE
巻: 15 ページ: e0235486
10.1371/journal.pone.0235486