研究課題
本研究は、一般住民を対象として縦断的な研究を行うことにより、白血球DNAメチル化レベルの変動に影響する生活習慣などの要因を明らかにすることを目的としている。令和3年度は縦断的な解析を実施するために500人規模の健診の受診者を対象として、検体採取、白血球ゲノムの抽出、各種遺伝子のDNAメチル化率を測定し、縦断的データベースの構築ならびに解析を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染防止の観点から令和3年度の対象予定であった健診は中止となった。そこで同じ地域で行われた2つの小規模健診の受診者を対象に検体を採取、白血球ゲノムの抽出、TXNIP、SOCS-3の各遺伝子のDNAメチル化率の測定を行い、現在解析中である。これまでに測定した白血球LINE-1のDNAメチル化率を用いて、心血管疾患(CVD)死亡との関連について傾向スコアマッチング法を用いて縦断的な解析を実施した結果、高齢者群では、LINE-1の低メチル化がCVD死亡リスクの増加と関連していた(J Epidemiol Community Health. 2021;75(9):890-895.)。また横断的解析により、生体内酸化ストレスと関与するTXNIP遺伝子の低メチル化とメタボリックシンドローム(MetS)との関連を認め、MetSの発症に関与することが推察された(Endocr J. 2022;69(3):319-326.)。さらに飲酒量が多い者ではTXNIP遺伝子のDNAメチル化率が低く、アルコール関連疾患の発症への関与も示唆された(Am J Drug Alcohol Abuse. 2022;13:1-9.)。現在、DNAメチル化率の縦断的データベースを作成し解析をすすめているが、対象者が少ないため、令和4年度に予定されている500人規模の健診の受診者を対象に含めて解析を行う予定である。
3: やや遅れている
新型コロナウイルスの影響により対象者を抽出する予定であった健診が中止となり、別途異なる健診参加者を対象としたが、計画していた対象者人数より少ない状況にあり、当初の予定の一部を変更せざるを得なくなった。
今後はより多くの解析対象者を収集しDNAメチル化の縦断的解析データベースの構築をめざすために、令和4年度に実施される健診の受診者から検体・データの収集を行い、DNAメチル化率の解析を実施していく予定である。解析結果については関連学会等で発表を行い、さらに論文化し学術雑誌へ投稿する。
当初予定されていた健診が新型コロナウイルスの影響で中止となり、研究計画に影響が生じたことが大きな要因である。今後は縦断的な解析データ作成に向け、令和4年度実施予定の健診受診者を対象として検体採取、各種遺伝子のDNAメチル化率の分析およびデータ解析を行っていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件)
The American Journal of Drug and Alcohol Abuse
巻: 48 ページ: 302~310
10.1080/00952990.2022.2037137
Endocrine Journal
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10.1507/endocrj.EJ21-0339
Journal of Epidemiology and Community Health
巻: 75 ページ: 890~895
10.1136/jech-2020-215382