研究課題/領域番号 |
20K10517
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
家森 幸男 武庫川女子大学, 国際健康開発研究所, 教授 (80025600)
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研究分担者 |
森 真理 東海大学, 健康学部, 准教授 (70399343)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 24時間尿分析 / 脳MRI健診 / 認知機能 / 脊振健診 / 長浜健診 |
研究実績の概要 |
世界保健機関(WHO)の協力を得て世界61地域で24時間尿のバイオマーカーを採取し、栄養のバイオマーカーの分析から、大豆イソフラボン、魚のタウリン(T)の共通の摂取が世界で最も多いのが和食の特色であると分かった。大豆食習慣のある東洋地域に限られる為、大豆を含め世界共通の種実食のマーカーとしてマグネシウム(Mg)に注目し、日本食(J)と並んで長寿者の多い地中海食(M)との共通因子としてマグネシウム(Mg) に注目し、平均寿命が両者に比べて短かい西欧食(W)とを比較したところ、JとMは、Wに比べてMgとTの摂取が有意に多く、これがJとMではWに比べ、血圧、血清コレステロール値が有意に低く、心筋梗塞のリスクが有意に低いため、長寿である事を検証した(学会発表・英文学術誌投稿)。その成果を早速認知症予防栄養因子の24時間はバイオマーカーの本研究の分析に活用した。初年度は、既に2017年から栄養疫学研究に参加し、24時間尿サンプルを集めて来た佐賀県脊振町の住民60歳以上のサンプル中、すでに脳MRI健診のデータが分析可能な475名中脳機能検査、MMSE、CAD2、MoCA-JA を分析し得た296例につき、24時間尿のナトリウム、カリウム、Mg、T、尿素窒素を分析、健診時の身体計測、血圧、採血での糖代謝、脂質代謝を検査し、既応症、飲酒、喫煙、食事、運動などを分析した。特に本科研費により、血液の葉酸値(F)、ホモシステイン(H)を分析し認知機能との関係を分析した。本科研申請時の作業仮説として提起したFとHとの逆相関は、有意である事が示され、種々の認知機能検査の中で、これらと相関する結果が得られており、認知症の予防に有効な栄養因子の今後の解明が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2017年以来毎年24時間尿による栄養健診を60歳以上、80歳以下の長浜市での健診参加者で実施して来たが、COVID-19の世界的流行の為、高齢者の健診参加が制限された。しかし、2017年以来24時間尿採取を協力して来た脊振での60歳以上の脳MRI健診参加者での尿の栄養バイオマーカーと健診成績との相関関係の分析が可能で計画以上の研究成果が得られつつある。 まず、和食の特徴的栄養因子である大豆と魚の摂取者での最大の欠点である食塩過剰摂取は、今回の健診結果でもNa、Na/K比が体重、腹囲、BMI、さらに收縮期、拡張期の血圧の両方、又は片方と有意の相関と示した。新たに日本食、地中海食の共通の長所と分かったMg/クレアチニン比が体重、BMI、腹囲、血圧と逆相関し、WHOの協力を得た世界健診の成果(Hypertens Res. 38, 219, 2015)を確認した。このMgが大豆イソフラボンと正相関する事を明らかになり、地中海食と共通の日本食のMg摂取が大豆に由来する事を明からにした。さらに、このMg摂取が多い人では葉酸値(F)が高い事、Fの高値はホモシステイン(H)の低値と有意の逆相関を示す認知機能検査ではFやHと有意の正、又は逆相関する検査法を見出しており、今後の更なる統計分析が期待される。 これまでの世界健診の結果では、世界一の平均寿命を1980年代に達成したとされるハワイ島在住の沖縄県出身の日系人の健診では、認知機能を簡便なMMSEでの評価をし、日本の長寿地域丹後半島の住民と比較したところ、ハワイ島住民では食塩摂取が1日6gで、丹後半島住民の1日8gより有意に少なく、血液アルブミンが有意の高い事と報告したが、今回の脊振脳MRl健診においても、これから食塩摂取量などと認知機能の関係につき検証をすすめ、認知症予防の栄養指標としての有用性の解明に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
葉酸(F)は、大豆イソフラボン、魚介のタウリン(T)摂取が共に多く、24時間尿中排泄量の多い群で血中レベルが高い事を検証した(PLOS One 12, 2017)。米国では1998年以後、精白された小麦粉などにFを強制添加する法制度の制定された後、21世紀になり年代別の認知症発症率の低下している事、さらに、FとB6、B12などを高齢者に2年間投与したオクスフォード大学の介入研究では、脳萎縮の程度がプラセボ群と比べて有意に少なかったという成績から、脳萎縮抑制効果と認知症予防効果の検証が期待されている。幸い脊振町での脳MRI健診では、八尾博史博士が共同研究でMRIを用いた voxel-based morphometry を利用し、脳画像解析で検討しており、Fが高値と低値の高齢者の海馬の容積などの画像解析による測定も進め得ると期待される。 第1年目の研究成果でFとホモシスティン(H)に逆相関関係があり、脳機能検査でFとHに有意の相関を示す成績が検証されたので血中レベルと24時間尿のFとHを分析し、尿中と血中レベルの相関の有無を検証する。24時間尿で、HをHPLCで測定する方法の検討を研究協力者戸田登志也教授が進めており、これが可能となれば、食生活と積極的に変える介入研究を実施し、24時間尿中のFや認知症のみならず動脈硬化性疾患の発症リスクともなるHを測定し、Hを積極的に変えうる栄養を追求し、認知症予防に有効な栄養因子の研究をさらに進め得る期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス蔓延の影響が大きく、人を対象とする研究が思うように進まなかったため、計画通りの支出が困難であった。第1年度では認知機能との関係がこれまでの研究成果より関連性があると考えられる葉酸(F)とホモシスティン(H)を血液で分析したが、第2年度は研究予算を用いて24時間尿サンプルでFとHを測定し、夫々血中のレベルとの相関性を検討すると共に認知機能との関係を分析する。
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