研究課題/領域番号 |
20K10524
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
色川 俊也 東北大学, 事業支援機構, 准教授 (70375179)
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研究分担者 |
大河内 眞也 東北大学, 事業支援機構, 講師 (40375035)
黒澤 一 東北大学, 事業支援機構, 教授 (60333788)
小川 浩正 東北大学, 事業支援機構, 准教授 (90361162)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 災害労働者 / 東日本大震災 / 肺機能 / 職業性肺疾患 |
研究実績の概要 |
東日本大震災で救助活動・復旧作業に従事した、救急隊員・消防隊員・がれき処理作業従事者の災害対応業務時の職業曝露による肺機能への影響を調査検討する目的で、令和2年度は仙台市消防局に協力依頼を行い調査研究への協力を受諾していただいた。その後、仙台市消防局総務課を通じて、同消防局員約1000人に協力を呼びかけていただいた結果、19名の方から同意を得ることができた。同意者の東日本大震災前後で2回以上の、肺機能検査結果を含む健康診断結果(身長、体重、BMI、胸部写真読影結果)を入手する事ができた。 国内での新型コロナ感染症の感染拡大に伴い、協力要請など面会での実施が難しかったため、交渉に時間を要した。しかし、研究協力同意者19名への説明は、事前に作成・配付した説明文書を以て書面で同意を得ることが出来た。また、協力者の健診結果の一部は、直接、健診機関から取り寄せる形式で取得することで同意を得たが、健診受診後5年の保管期間を満了し、既に受診結果が廃棄されていたり、健診機関の組織改編により廃棄・入手不可能となった事例もあり、最終的には19名中17名の東日本大震災前後での肺機能検査結果を入手するのがやっとであった。予想に反してデータ収集が困難である事が判明したため、調査対象を当初予定の石巻市総合消防本部に加えて名取市消防局にも調査協力をお願いすることとし、現在、協力可否の返事を待っている状態である。 肺機能検査結果は事例が少ないため、現在のデータだけでは分析・判断が困難であるが、健診結果提供と同時に依頼した作業状況や防護具の装着状況に関するアンケート結果から、東日本大震災での救助活動の際に、殆どの隊員は不織布マスクを装着して作業していたこと(防塵マスクや防毒マスクではなかったこと)、防護具装着に関するフィットテストなどの研修がなされていなかったことなどがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最大の理由は、当初は、50名から100名程度の健診結果を入手する事ができると考えていた仙台市消防局職員の協力者が、予想に反して少なかった事である。 また、震災後既に10年を経過したが、古い健診結果は保管している人が必ずしも多くないこと、健診機関によっては法的な保管期間を超えた(5年より前の)健診結果を適宜廃棄しているところがあったことも進捗を遅らせる一因となった。 更に、近年、健康に関する個人情報管理が厳格化していることに伴って、本人同意の下に健康診断結果の提供を依頼した場合でも、各健診機関(病院)の倫理委員会承認を得ることが必須となっており、時間を要したことも遅れの一因となっている。 昨年来、国内で感染の拡大・縮小を繰り返している新型コロナ感染症の動向も対面での調査・交渉日程に少なからず影響を及ぼしている。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象(協力依頼)を当初予定の石巻市総合消防本部に加えて津波被災地域を管轄に持つ名取市消防局にも調査協力をお願いすることとした。2021年4月20日現在、協力可否の返事を待っている状態である。 令和3年度は、目標の200例にできるだけ近い数の救急隊員・消防隊員の肺機能検査結果を入手し、分析すると共に、その結果を日本産業衛生学会や日本呼吸器学会、米国産業衛生学会などで発表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査協力者に支払う謝礼(5,000円)×200人=1000000円を使っていないこと。新型コロナ感染症の拡大により国内外の学会開催がWeb開催となり、旅費450000円を使っていないことなどが大きな要因である。 今年度は、調査対象自治体消防局を拡げて協力を依頼すると共に、分析結果が出しだい、国際学会も含めWebでの参加も検討したい。
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