研究実績の概要 |
体内の酸化反応と抗酸化反応の均衡が崩れ、酸化ストレスが高まると、慢性炎症リスクを上昇させることが報告されている。本研究は、生活習慣因子(食事や喫煙など)とバイオマーカーを用いて酸化ストレスに関与する酸化促進因子と抗酸化因子をスコア化することで体内の酸化ストレス状態を評価し、生活習慣病バイオマーカーとの関連を明らかにすることである。 炎症性サイトカインの1つである高感度CRPは、酸化促進因子である喫煙や飲酒により上昇し、ビタミンCやポリフェノールなどの抗酸化因子により低下することが報告されているが、単一の要因による影響に限られていたことから、本研究において、酸化バランススコア(Oxidative balance score: OBS)と高感度CRPとの関連について既に報告した。さらに、検討を進めるため、複数の炎症性サイトカイン(高感度CRP, IL-6, IL-8, IL-15, TNF-α)を用いた炎症性zスコアを作成し、OBSと関連を検討した。 日本多施設共同コホート研究(佐賀地区)ベースライン調査の参加者1652名(男性668名、女性984名)のデータを用いて検討行った。栄養素摂取量は、エネルギー摂取量を調整し、抗酸化因子(カロテン・ビタミンE・ビタミンC・身体活動量・非ステロイド性抗炎症薬服用)と酸化促進因子(血清フェリチン・n-3 PUFA・n-6 PUFA・飽和脂肪酸・飲酒・ 喫煙)を組み合わせて各個人のOBSを算出した。OBS は、スコアが高いほど酸化ストレスは低い(酸化促進因子による曝露よりも抗酸化因子が優位である)と評価される。OBSと炎症性zスコアとの関連を検討した結果、OBSが高くなるほど、炎症性zスコアが有意に低下する傾向が認められた。
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