研究課題/領域番号 |
20K10554
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
草野 麻衣子 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (60733574)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分析化学 / 薬物動態 / MSイメージング / 合成カンナビノイド / LC/MS/MS |
研究実績の概要 |
研究初年度では、大麻の活性成分であるΔ9-THC及び新旧世代の合成カンナビノイドJWH-018とAB-CHMINACAについて、薬物投与したマウスから採取した脳試料より抽出を行い脳内神経伝達物のLC/MS/MSによる同時分析条件の確立を主に行った。本研究でターゲットとしている化合物は脂溶性と水溶性の化合物の両方を含んでいるため、LC/MS/MSを用いてそれらの同時分析を行うには工夫を要する。また、脳などの臓器中には質量分析時に問題となる夾雑物が多く存在するため、脳試料の前処理についても検討を行った。分析カラムの選択及び分析条件の検討を行い、本研究のターゲット化合物の同時分析法を確立した。 本研究の比較対象としているΔ9-THC、JWH-018、及びAB-CHMINACAをそれぞれマウスに投与し、行動実験を行いそれぞれの薬物による作用の違いを記録した。薬物投与後に薬物作用が一番強く出ている時間にマウス脳を採取し、確率した同時分析法において実サンプルでも問題なくターゲット化合物を分析できることを確認した。また、LMD-LC/MS/MS法によるMSイメージングの前段階として、従来のMALDI-MSイメージングを用いてそれぞれの薬物投与マウス脳のイメージングを行った。 さらには、マトリックスを用いない新規イメージング基盤を用いたMSイメージングも行い、その有用性を検討している。 現在は確立した同時分析法による定量分析バリデーション(検出限界・定量限界・日内・日間変更等の評価)を進めていると同時に、トランスジェニックマウスを用いた薬物投与マウスの神経活動履歴の可視化等を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の主たる目的として、ターゲット化合物の同時分析条件の確立は概ね達成できた。本研究では脂溶性と水溶性の化合物をターゲットとしていることから、LC/MS/MSの分析条件の検討を行う必要があった。具体的には、通常脂溶性の薬物分析に用いられるC18逆相カラムと、順相と陽イオン交換のミックスモードのアミノ酸分析用カラムを用いて検討を行った。質量分析時におけるイオン化条件等の最適化を行った結果、どちらのカラムを用いても本研究のターゲット化合物を全て分離・検出できた。各化合物の標準品を用いての条件検討後、マウス脳に薬物を添加したサンプルでも神経伝達物質及び薬物がシャープなピーク形状・ベースライン分離で検出できることが確認された。神経伝達物質のうち、いくつかの化合物はアミノ酸分離用カラムのほうがシャープなピーク形状が得られたことから、こちらのカラムを選択した。 定量分析バリデーションにおいては、薬物添加していないブランクマウス脳中のアセチルコリン等のいくつかの神経伝達物質のイオン強度が高いことから、分析時にサンプルを希釈する必要があることが確認されたため、現在分析バリデーションを進行中である。 それぞれの薬物を投与したマウスの行動解析から、Δ9-THC、JWH-018、およびAB-CHMINACAは同じカンナビノイド受容体を介して作用するが、Δ9-THC<JWH-018<AB-CHMINACAの順に急性毒性が強く異常行動を誘発することが確認できた。各マウスの脳のMALDI-MSイメージング、さらにはマトリックスを用いない新規イメージング基盤を用いてMSイメージングを行い、脳内の薬物分布と神経伝達物質の分布イメージを取得した。
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今後の研究の推進方策 |
上記で確立したマウス脳中薬物及び神経伝達物質の同時分析法で実施中の定量分析バリデーションを終了する。さらに、マウス投与実験より得られたサンプルを用いて本法の有用性および再現性をさらに評価する。 R3年度では、研究初年度で行えなかったトランスジェニックマウスを用いた神経活動の可視化等を行う。また、研究計画工程で記載したPhase 2を開始し、薬物投与したマウス脳内の部位別における薬物の時間濃度推移を測定し、LMD-LC-MS/MSイメージングを開始する。
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