研究課題/領域番号 |
20K10555
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮尾 昌 京都大学, 医学研究科, 講師 (90711466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 法医病理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、非アルコール性脂肪性肝炎(以下、NASH)における血管内皮ミトコンドリア障害と急性心筋梗塞との関連を解明することを目的とした。NASHの発症と病態進展は、急性心筋梗塞発症と相関することが分かっている。血管内皮は、肝臓と心臓に共通に分布し、その内皮のミトコンドリアが障害されると、過剰な活性酸素の産生、アポトーシス、オートファジー、小胞体ストレスを引き起こし、全身臓器疾患の原因となる。しかし、内皮ミトコンドリア障害がNASHと急性心筋梗塞に関連するかは分かっていなかった。 2021年度には、以下のことを明らかにした。 ①NASHの進展に伴い、肝細胞内の過剰なミトコンドリア分裂の誘導が起きることがわかったが、当初の仮説とは異なり内皮細胞内のミトコンドリアの挙動には大きな変化を見いだすことはできなかった。 ②NASHに至る手前のNAFLの段階ではミトコンドリア分裂阻害による病態進展抑制の効果は低く、わずかに肝臓内グリコーゲン貯蔵能の改善などがみられるのみであることがわかった。 ③NASHに至ると過剰なミトコンドリア分裂を阻害すれば、肝細胞内のミトコンドリア優位に分裂抑制が起き、肝細胞や胆管上皮、内皮、マクロファージ、肝星細胞の障害を抑制することで肝臓内炎症、線維化反応を抑制できることがわかった。 ④心臓組織では、NASHの進展やミトコンドリア分裂阻害の有無に関わらず病理学的に有意な変化を見いだすことができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自粛の影響で担当予定であった教育や実務のエフォートが下がったことで研究のエフォートが増えたため。 また、当初異なるNASHモデルで検証する予定であったがより早期にNASHに至るコリン欠乏食のNAFLの病期にミトコンドリア分裂阻害の効果が想定よりも低かったため、高脂肪食モデルでの検証をやめコリン欠乏食のみに集中し実験を行うこととしたため、実験や執筆が想定よりも早く進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
肝細胞内の過剰なミトコンドリア分裂を抑制する効果だけでなく、糖尿病や脂肪織炎の改善がNASH進展抑制に寄与していることが考えられるため、早期NASHモデルを作製し、脂肪組織の炎症反応、インスリン抵抗性の変化を解析する。 また、早期NASHにおける線維化反応抑制効果はみられたものの、進展期のNASHにおいてもミトコンドリア分裂阻害に病態進展抑制効果がみられるかどうかを検証する。
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