研究課題/領域番号 |
20K10558
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
新谷 香 (石田香) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345047)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋分化 / 加齢 / カルパイン / miRNA |
研究実績の概要 |
タンパク分解酵素であるカルパインは、特定のタンパク質を限定分解することによって心筋梗塞など様々な病態に関与する。本研究では、カルパインが遺伝子 の転写後発現調節を担うmiRNAの発現量を調節するという新しい仮説を立て、細胞傷害や加齢への関与を検討することを目的としている。 昨年度、マウス筋芽細胞株C2C12細胞にカルパイン阻害剤MDL-28170を添加し、筋分化への影響やmiRNA発現量の変化について検討したところ、分化が抑制され、筋特異的miRNAであるmiR-133やmiR-1の発現量が低下していることを見出した。本年度は内因性カルパイン阻害物質であるカルパスタチンを細胞内に導入し、同様の検討する予定であった。しかし、CAS CRISPR Activationプラスミドを用いたカルパスタチンのノックインは成功したが、細胞毒性のため分化の実験に進むことができなかった。今後、カルパスタチンの導入方法について再検討する必要が生じた。 一方、C2C12細胞の継代繰り返しによる細胞老化モデルでは、筋分化能の低下とともにmiR-133やmiR-1の発現誘導が抑制されていることを見出した。miR-133とmiR-1のmiRNA mimicを導入すると、筋分化能は回復した。また、老化細胞除去薬を用いて、加齢細胞から細胞老化の進んだ細胞を選択的に除去すると、miR-133の発現量が上昇した。このことから、細胞老化による筋特異的miRNAの発現量の低下が加齢による筋分化能低下に関与していることが示唆された。さらに、3ヶ月齢の若齢マウスと20ヶ月齢の老齢マウスから筋芽細胞を単離し、miR-133とmiR-1の発現量を比較すると、老齢マウスの両miRNA量は若齢マウスの約1/10に低下していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内因性カルパイン導入の実験は難航しているが、加齢モデルの実験が予定より進んだので、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
内因性カルパイン導入実験については、導入方法を変更して検討する。C2C12細胞の継代繰り返しによる細胞老化の研究は、これまでの成果をまとめて専門誌に投稿する予定である。本研究で得られた細胞老化に関する結果は加齢による筋再生能力の低下のメカニズムを理解する上で重要な知見となり得ると予想されるので、当初の計画にはなかったが、マウス骨格筋損傷モデルを作製し、加齢による損傷治癒の遅延がカルパインの活性低下や筋特異的miRNAの発現量低下の影響を受けるのか等について、研究対象を広げ検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
CAS CRISPER activationベクターを用いたカルパスタチンのノックインが難航し、実験が進まなかったため助成金に残額が生じた。別のカルパスタチンノックインの方法を検討する必要があるため、翌年度分と合わせて使用する。
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