研究課題/領域番号 |
20K10562
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
藤田 友嗣 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50721974)
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研究分担者 |
藤野 靖久 岩手医科大学, 医学部, 特任准教授 (80306026)
臼井 聖尊 東北大学, 医学系研究科, 講師 (80567884)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 界面活性剤 / 陽イオン界面活性剤 / 消毒剤 / 4級アンモニウム化合物 / 中毒 |
研究実績の概要 |
界面活性剤の中で消毒剤として用いられる陽イオン界面活性剤は毒性が強く生命の危険を脅かす化合物の一つである。陽イオン界面活性剤である[モノ,ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレ)]-アルキルトルエン(TAMCA)は塩化メチルアルキルベンジルトリメチルアンモニウム(以下、モノ体)及び塩化メチルアルキルキシリレンビストリメチルアンモニウム(以下、ビス体)の混合物(4:1)であり、動物に対する消毒剤として広く使用されている。これまでヒトにおいてTAMCAによる中毒・死亡例が報告されているが、生体試料中のモノ体とビス体の分析に関する報告、また中毒濃度、体内動態、代謝物などの情報は殆ど無い。本研究の目的は、本中毒物質の生体試料における分析法の開発及びヒトにおける中毒データを採取し、TAMCA中毒を証明・評価する方法を確立することである。 本年度は、モノ体とビス体の標準品を用いて高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析装置(LC-MS/MS)による分離・検出法を構築するとともに生体試料中の抽出法を確立した。確立した分析法をTMCA中毒患者試料へ応用したところ、来院時の患者血液及び尿からモノ体とビス体の標準品と同一のプロダクトイオンスペクトルを持つピークが検出された。患者血液中のモノ体とビス体濃度を測定するあたり、定量分析法の精度確認を実施した。その結果、本法が精度良く血液中のモノ体とビス体を定量できる方法であることが確認されたため、患者血液中の濃度測定を行った。確立した分析法は生体試料からモノ体とビス体を検出ならびに精度良く定量することができ、TMCA摂取の証明に役立つと考えられる。また、得られた血中濃度データはTAMCA中毒の評価に有用な情報になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はモノ体とビス体の標準品を用いてLC-MS/MSを用いた分離・検出方法を構築し、生体試料からの抽出法を確立した。この確立した分析法をTMCA中毒事例に応用し、来院時の患者血液及び尿からモノ体とビス体の標準品と同一のプロダクトイオンスペクトルを持つピークを検出することができた。また、患者血液中のモノ体とビス体の定量分析を行うにあたり、精度確認を実施し、精度良く定量できる方法であることが確認された。患者血液中のモノ体とビス体の濃度測定を行い、経時的血中濃度データを採取することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、採取した患者血中濃度データを基にモノ体とビス体の体内動態について検討する。また、患者の尿および投与部位の頸部組織の濃度に関しては標準添加法を用いて定量分析を行い、得られたデータを血中濃度と比較し検討する。さらに代謝産物の同定に向けて、高速液体クロマトグラフ-タンデム型高分解能質量分析装置(LC-TOF/MS)を用いて患者サンプルを測定し、採取したデータを基に代謝物の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍において、分担研究者および連携研究者と密な打合せを行うことができなかった。また、コロナ感染のリスクを避けるために学会へ参加しなかった。そのため、旅費として計上した分を使用できず繰越が発生した。次年度もコロナの感染状況が改善しなければ、同様な状況になると思われる。旅費分は代謝物解析で使用する解析ソフトや解析用PC用の購入にまわす予定である。
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