入浴中の急死例で、病的所見を認めず、入浴前にアルコールや催眠薬摂取がみられない症例剖検例3例を追加した。 コントロール症例の窒息剖検例を入れ替え、溺水(湖や河川内)11例に変更した。 入浴中の急死例の追加した3例と、新たな変更したコントロール症例の溺死症例11例について、小脳のパラフィンブロックよりHE標本と抗Calbindin-D28k抗体、HIF-1α抗体、VGEF抗体を一次抗体として用いて免疫染色を行った。 HE標本では、小脳のプルキンエ細胞の形態を1-3群に分類した。免疫染色標本では、各々の抗体で、染色した標本について、顕微鏡の高倍率で100個のプルキンエ細胞を鏡検し、茶色に強く染色されている例を陽性、染色されていない例を陰性とし、プルキンエ細胞100個をカウントした。半数以上(50個)陽性を陽性例とした。 抗Calbindin-D28k抗体にて、入浴中の溺死例群(入浴中の溺死で病的所見を伴う症例9例、入浴中の溺死でアルコール摂取を入浴前に行った例9例、入浴中の急死例で溺死所見のみ認める症例17例)について、コントロール例群(多発外傷22例、溺死(湖か河川内)11例、心臓疾患22例)について、Mann-Whitney U-test を施行し、統計学的有意差があるか否かを検討したところ、入浴中急死例3群とコントロール例の溺死(湖や河川内)との間で、統計学的有意差を認めた(p<0.05)。HIF-1α抗体、VGEF抗体を用いた染色では、有意差を認めなかった。入浴中の溺死例では、解剖学的に肺に溺水の吸引を認める例でも、河川、湖内での溺死例と比較して、プルキンエ細胞の虚血性変化の程度は少なく、温熱の効果で、入浴中の溺水の吸引前に不整脈などの病的発作を起こしている可能性が示唆された。
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