研究課題
本研究の目的は、時間遺伝子が血管新生に果たす役割を明らかにすることである。研究代表者は、過去の研究において、光顕では創部に新生した血管が、早期では皮膚に直角方向に長く伸び出しており、これが時間とともに健常部同様の血管走行に変化していくことを確認している。これは内皮細胞の形態の一種のリモデリングと考えられ、血管内皮構造のリモデリングという新しい概念があることを示している可能性がある。このような形態変化を捉えることにより、創傷の古さの判定や、治癒過程が正常に進んでいるかを判定することができることが期待される。さらに、研究代表者は、過去の研究において、時間遺伝子のミュータントマウスでは、血管新生因子のmRNAの発現の時間経過がコントロールマウスと異なっていることを明らかにしてきた。そこで、本研究においては、時間遺伝子のミュータントマウスである B6.Cg-Per2tm1Brd Tyrc-Brd/JとそのコントロールマウスであるB6(Cg)-Tyrc-2J/Jについて、皮膚に創を作成し、一定期間後に創の組織を採取し、連続切片について血管内皮マーカーであるCD31で免疫染色し、3D画像を構築してきた。3D構築は厚みにおいて立体像に限りがあるため、通常の免疫染色像において新生血管伸び出しの面積を計測している。さらに、低体温症の診断に資するため、糖尿病マウス及びコントロールマウスにおいて、低体温症の診断に血中の3―ヒドロキシ酪酸定量が有用であることを示した。また、法医診断学への貢献に資する研究を行い、クロル中毒において、3-chloro-L-tyrosineが新しいマーカーとなることを示した。さらに、シアン中毒のマーカーとして、2-aminothiazoline-4-carbaxylic acidが有用なマーカーであることを示した。
2: おおむね順調に進展している
マウスへの創作成は完了し、組織を採取して、血管新生の免疫染色を実施している。血管面積の定量を実施している。
今後は、マウスの創における新生血管の面積定量につき、時間遺伝子ミュータントマウスとコントロールマウスでの差異を検討する。また、組織を透明化して、血管新生の3D評価を実施する。
試薬代が一部余ったため、次年度に使用する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis
巻: 207 ページ: 114429~114429
10.1016/j.jpba.2021.114429
Legal Medicine
巻: 52 ページ: 101908