本研究の過程において、グリオーマ細胞に対し、植物性カンナビノイド(CBD)ならびに内因性カンナビノイド(AEA)により顕著な細胞毒性が誘導される可能性が示唆された。そこで、最終年度においては、これまでに認められたCBDおよびAEAにより誘導される細胞毒性に寄与するメカニズムの詳細を明らかにするとともに、異なる動物種由来の培養細胞モデルを用いることで、カンナビノイドによる細胞毒性の蓋然性について検証することとした。 グリオーマのモデル細胞として、ラット由来C6細胞とヒト由来U87細胞を用い、CBD、2-AG、AEAで処理した。両細胞ともに2-AG処理では顕著な変化が認められなかったが、AEA処理では細胞生存率が急減するとともに細胞傷害率が急増し、CBD処理では細胞生存率は急減したが細胞傷害率は漸増した。これらの結果から、少なくともラットとヒトのグリオーマ細胞に対するカンナビノイドの作用機序には共通する機構が関与しているものと思われる。また、これらカンナビノイドに由来する細胞毒性に対するアポトーシス機構の関与について検討したところ、CBD処理の場合にのみcaspase3/7活性の上昇を認めたことから、CBD誘導性の細胞毒性にはアポトーシス機構が関与していると考えられる。 本研究では当初、内因性カンナビノイドシステムと脳内報酬系との関連性を明らかにすることを目的としていたが、研究過程において培養細胞モデルに対してカンナビノイドによる細胞毒性が見出された。生体内において、このようなカンナビノイドによる細胞毒性をグリオーマ細胞特異的に誘導することができるとすると、カンナビノイドの適用が難治性とされるグリオーマに対する効果的な治療法となる可能性が期待される。
|