研究課題/領域番号 |
20K10581
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石亀 篤司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60212867)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体リズム / 同期現象 / 脳波EEG / 知的照明システム / 看護環境システム |
研究実績の概要 |
本研究は、患者のQOL向上および看護する側の負担軽減のために、患者と看護師の身体的あるいは感情的な生体リズムの同期を利用した看護環境システムの構築を目指している。具体的には、心の働きに大きく関係しているとされる心臓の電気信号データを基に、同期現象の数理モデルを考案し、五感への入力が心臓や脳波に与える影響を、モデル解析からの理論的な観点と生体計測で収集したデータ解析をもとに実験的観点からシステム構築に向けて検討を進める研究である。 本年度は、これまで蓄積した脳波の同期に関する一連のデータを解析することにより、同期現象の数理モデルを考案し、解析結果と実験結果の双方からの検討を行った。まず、照明環境と2者間のコミュニケーションにおける相互作用の関係を調べることを目的として、脳波EEG計測データの周波数解析から、同期現象の数理モデルを導出した。数理モデルと照明環境下での相互関係実験による結果の考察から、非言語情報が同期に与える影響はコミュニケーション方法によって多少は異なるが、照度を最適にすると同期が進むことを明らかにした。 さらに、ストレス・不安の緩和を促す最適な照明環境についてクルイトフ曲線の快適領域の範囲内における照度・色温度から検討を行った。その結果、脳波・心拍の測定により低照度・低色温度になるにつれてリラックス度が高まることがわかった。また不安とストレスの関係について、ストレスが小さい照明環境で不安が低減することもわかった。今後は、他の快適領域内での照度・色温度について実験を行い、照明とストレスの関係について数理モデル化を行うことによる、実践的なストレス低減の照明デザインの提案や、脳波・心拍以外の脳血流など他のストレス指標となる生理現象にも着目を行うことで知的照明システムの提案へもつなげていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID19の影響で、オンラインでのミーティングが増えていることや、被験者を集めることが少々難しいなどがあったが、小人数で密を避けた同期現象の実験検討を行い、多くのデータを収集することが出来た。また様々な実施可能な実験環境を作り出すことにより、全体としては概ね研究計画が遂行できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、COVID19の収束状況を見極めながら被験者を多く集めた実験を滞りなく実施することで、心臓の電磁波解析や、心電データと脳波、脳血流変化の関係を明らかにし、同期現象の数理モデルがさらなる汎用性をもつような検討を行っていきたい。さらに、構築した数理モデルを利用した解析、音楽・映像・感覚刺激・臭い・味覚などの同期現象を誘発する信号に基づくフィードバック状態量制御の検討を通じて、看護環境システムの構築を目指して検討を進めていく予定である。
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