本研究は、患者のQOL向上および看護する側の負担軽減のために、患者と看護師の身体的あるいは感情的な生体リズムの同期を利用した看護環境システムの構築を目指している。 本年度は、これまで蓄積した脳波の同期に関する一連のデータに加えて、心拍を利用した同期現象についての実験を行い、得られたデータを解析することにより、数理モデルの拡充を図るとともに、環境システム構築についての検討を行った。 具体的には、まず、効果的に心拍における同期現象が誘発できる手法の候補として,振動モータを利用した開発機器による呼吸統制を用いた実験を行い、その際の自律神経系への影響や同期度合いについて様々な指標を用いて評価を行った。その結果、心拍変動については弱い相関は見られたものの,高いレベルの相関とはならなかった。その一方で自律神経活動指標が悪化しているという結果が得られ、脳波の同期が起きていたとしても、リラックス状態には無い可能性があることがわかった。 次に、照明環境の制御によってストレスや不安の緩和を促すシステムの構築を目指した検討を行った。その結果、脳波・心拍ともに低照度・低色温度になるにつれてリラックス度が増えており、ストレス・不安の関係からストレスが小さい照明環境で不安が大きく低減出来ることがわかった。以上のことからストレス・不安の緩和を促すには、クルイトフ曲線の快適領域の中でも 350lx の低照度・3500K の低色温度に近づく照明環境が適していると考えられる。 今後の課題としては、アンケートによる主観的評価や脳波・心拍から得られる快適性評価をさらに精度の高いものにする必要があることや、照明環境に聴覚刺激である音を負荷させた融合環境において、リラックスを促す要因を探ることがあげられる。これらの研究をさらに発展させて、知的照明を利用した看護環境システムの提案に繋げていきたいと考えている。
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