研究課題/領域番号 |
20K10591
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
江頭 典江 京都先端科学大学, 健康医療学部, 嘱託講師 (70547463)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己像 / 看護職 / 看護過程 / 歴史 |
研究実績の概要 |
個人的史料として、「看護過程」の日本への導入に貢献した方のオーラルヒストリーデータの収集に取り組んだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、インタビューはオンラインで1名、対面で3名の方に実施させて頂いた。 インタビューでは、回答者の立場から「看護過程」に対する考え、1970年代以降の看護を取り巻く社会システムへの関心がわかった。一県一医大構想で推進された病院設置により、全国から志のある看護師が集まった当時は、スタッフ間で新たな記録システムや看護のアプローチ法が普及しやすい状況であった。しかし、新たな看護のアプローチ法を推進する者とそれ以外の看護職の間に軋轢があったようである。また、医学の知識をもつ看護師が幅を利かせていた当時に、医学でない看護とは何かが模索され、看護独自の機能や看護理論家の紹介が盛んに行われたという経緯があった。また、米国で就労や就学経験のある回答者は、日本と異なり看護職の役割が組織管理で定められている点を強調された。しかし、日本と米国では医療制度の違いがあり、保健師助産師看護師法に則る必要性を語られた。臨床では、1970年代に「看護計画」をどのように作成すべきか困惑していた看護師が「看護過程」に納得できる回答を見出したという見解も聞くことができた。 回答者の語りは現在の看護にもおよび、日本の看護界を客観視した貴重な考えを聴取できた。研究成果は、令和4年度に看護研究学会で一部の発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
看護職の自己像の変化と直接的な繋がりを見出すには、個人的史料データの収集は一応完了したが、それを分析する作業が未着手である。理由は、インタビュー辞退者があったこと、可能な限り対面インタビューを希望したが、感染症の全国的な影響が残り、対面でのインタビューを行うことが計画通り進まなかったことがある。 現在までの進捗状況は、全体の2分の1程度である。史料収集のみでデータ分析に至らなかったため、年度内に研究成果はまったく公表できていない。 社会的史料では、現在まで継続されている2社の看護基礎教育のテキスト(1976年以降2010年まで)における「看護過程」項目の整理も一部を除き未整理である。 文献の収集はリストを作成して入手可能なものはできる限り入手した。
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今後の研究の推進方策 |
聞き取り調査が完了したデータを分析し、順次分析内容から得た知見を発表する。 令和4年度の日本看護研究学会では、KH Coderで分析した一名について演題を登録し、発表を予定している。 令和4年度は、1976年以降のテキストに関して調査した内容をまとめて発表するか、自己像に関連した先行研究の検討、もしくは看護の専門職化について検討を行い、成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度も感染による社会状況から、対面でのインタビューが計画どおり行えていない。そのため、令和4年度初めまでインタビュー実施がずれ込んだ。成果発表の学会は、オンラインやハイブリッド方式で、参加費と旅費等が必要である。これについては、令和2年度に旅費として経費計上した未使用分を充当する予定である。 また、追加で必要な文献入手に費用が必要である。
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