研究課題/領域番号 |
20K10658
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渕田 英津子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (90315846)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 模擬患者 / 多職種連携教育 / 協働的能力 / 看護学生 / 教育プログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,看護学生の協働的能力の向上を目的とした「模擬患者参加型多職種連携教育プログラム(以下,SP参加型IPEプログラム)」を検討し,その効果を検証することである。本研究における協働的能力は,Barr.H(1998)が多職種連携のための基礎能力の1つとして示した「連携協働するために必要な協働的能力」と多職種連携コンピテンシー開発チーム(2016)が示した協働的能力としての多職種連携コンピテンシーモデルを参考に,1)コミュニケーション力,2)多職種を理解する力,3)関係性に働きかける力,4)看護の役割を果たす力,5)内省する力から成る能力と定義した。 2020年度は,1)2019年度から老年看護学実習の一部として実施しているSP参加型IPEプログラムを協働的能力の向上が可能な内容に再検討する,2)看護学生の協働的能力の評価方法の検討を行う予定であった。1)は,COVID-19の感染拡大により対面での実施が困難となり,急遽Webでの実施を検討した。そのため,現行プログラムの見直しと検討を十分に実施できない状況となった。2)は,最初に(1)SP参加型IPEの研究動向,(2)IPEに使用できる評価尺度の検討を行うために,医学中央雑誌Web版を用い文献検討を行った。文献検討にあたり,検索用語/検索式/該当文献の除外基準/文献検討のためのマトリックス表を検討した。その後,(1)で検索された28文献を精読し,「解説/特集」「IPEでない」などの20文献を除外した8文献の研究デザイン/対象,教育方法を分析した。また,(2)で検索された503文献のタイトルと抄録を読み,「解説/特集」「IPEでない」などの462文献を除外した41文献を精読し,「IPEでない」「尺度を使用していない」などの19文献を除外した22文献の研究対象,IPEの実施方法,使用されている評価尺度の分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
看護学生の「協働的能力の向上を目的としたSP参加型IPEプログラム」を検討し,その効果を検証するために,2020年度は,1)2019年度から老年看護学実習の一部として実施しているSP参加型IPEプログラムを協働的能力の向上が可能な内容に再検討する,2)看護学生の協働的能力の評価方法の検討を行う予定であった。しかし,COVID-19の感染拡大により,SP参加型IPEプログラムが対面で実施できなくなり,急遽Webでの実施を検討する必要性が生じた。そのため,その準備と対応に追われ,協働的能力の向上を目指したプログラムの再検討をすることができない状況となった。また,看護学生の協働的能力の評価方法の検討をするために,まずは,(1)SP参加型IPEの研究動向,(2)IPEに使用できる評価尺度の検討を行うことにした。しかし,「多職種連携教育」「模擬患者」を検索用語として文献検索をすると6文献であることが明らかになった。そこで,検索用語を「多職種連携」「模擬患者」「看護教育」「医学教育」「薬学教育」「評価基準」「評価尺度」とし,それらのシソーラスを参考に「専門職間人間関係」「チーム医療」「多部門連携」「他分野共同学習」「教育評価」「教育測定」を検索用語として文献検討を行った。このように,検索用語/検索式の検討に時間を要した。また,文献検討の過程で文献のキーワードに「多職種連携教育」と記載がある状況から,2021年に「多職種連携教育」のシソーラスを検索した結果,「専門職連携教育」が統制語として2021年に登録されていた。そのため,検索用語/検索式の見直しを行い,再度文献検討を実施している。また,本学の老年看護は学部の実習を助教と2名,それ以外の学部教育と大学院を1名で実施している状況にある。そのため研究に使用できる時間の確保が困難である状況も遅れている理由である。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の感染拡大によっては,今後もSP参加型IPEプログラムは,対面ではなくWebや時間短縮での実施,連携をする大学の方針で他学部の学生が参加できない状況も生じる可能性がある。そのため,多様な実施方法においても看護学生の協働的能力が向上可能なSP参加型IPEプログラムを検討していく必要性があると考える。現在,老年看護学実習の一部として看護学生が参加している半日型のSP参加型IPEプログラムだけでなく,統合実習の一部として看護学生が参加している1日型のSP参加型IPEプログラムにおいても看護学生の協働的能力が向上できるプログラムになるように検討していく。 文献検討の結果,IPEに使用できる評価尺度は,IPEの準備状況を評価するThe Readiness for Interprofessional Learning Scale日本語版が6件と最も多く使用されていた。また,多職種連携協働/IPEの態度,多職種連携コンピテンシー等を評価する尺度が開発されていたが,開発途中である尺度が散見された。そのため,看護学生の協働的能力を評価できる既存の尺度は見つけられていない。 以上のことから,1)新たに医学中央雑誌Web版に登録された「専門職連携教育」の検索用語を用いた文献の再検討,2)SP参加型IPEプログラムの見直しと検討を行い,看護学生の協働的能力を向上できる課題/講義内容/演習時の教育的関わりの言語化,3)協働的能力を測定できる既存の尺度/質問項目/評価方法の検討,4)協働的能力の向上を目的としたSP参加型IPEプログラムの実施を行っていく。しかし,学部の実習以外の業務を1名でしている状況から,研究に使用できる時間の確保は困難な状況がある。そのため,研究補佐員の協力を得て効率的に研究が推進できるような体制作りを模索している。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大により,現在実施しているSP参加型IPEプログラムの実施方法が,急遽,対面からWebに変更となり,その準備と対応をする必要が生じた。そのため,既存のSP参加型IPEプログラムの検討・見直しにより,看護学生の「協働的能力の向上を目的としたSP参加型IPEプログラム」の検討が十分に行えない状況となった。また,当初は「多職種連携教育」「模擬患者」「看護教育」「医学教育」「薬学教育」「評価基準」「評価尺度」を検索用語として,1)SP参加型IPEの研究動向,2)IPEに使用できる評価尺度の検討を行う予定であったが,SPを用いたIPEの研究が特集や解説を含めても数件と少ない状況から,十分な文献検討を行えない状況が明らかになった。そこで,「多職種連携」に検索用語を変更するとともに,文献検討に用いる検索用語/検索式/文献の除外条件/マトリックス表などを再検討した。そのため,研究の進捗に遅れが生じた。2021年度は,2021年に登録された「専門職連携教育」を検索用語に追加した文献の再検討,協働的能力を測定できる既存の尺度/質問項目/評価方法の検討を予定している。また,文献検討で得られた結果を学会にて発表する予定である。加えて,研究を少しでも円滑に進めるために研究補佐員を継続して雇用する。そのため,文献複写代,学会参加費,研究補佐員への支払い等に助成金を使用する。
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