研究実績の概要 |
本研究は、医療者がどのような場面で道徳的苦悩を感じているか、職種や状況によってそれらが異なるのかなど現状を明らかにし、これらを踏まえ、道徳的推論の能力を向上させる当事者を中心においた多職種連携の教育プログラムを構築することを目的としている。今年度は関連する先行研究、特にCovid-19に関連する道徳的苦悩およびその対処に関連する研究のレビューを行うとともに、関連するシンポジウムを行い、研究の基盤構築を行った。臨床における道徳的苦悩に関する研究は多くの国で行われており(Corley, Elswick, Gorman, & Clor, 2001, 2005; Hamric, & Blackhall, 2007; Lorella, Giuseppe and Luisa; 2017, Poikkeus, Suhonen, Katajisto and Leino-Kilpi;2020)関心が高い。これらの研究において道徳的苦悩が持続することで職務満足の低下、離職につながるなど明らかにしている。これらを解決するために個人としては道徳的苦悩が生じているかを気づくこと(AACN2021)、レジリエンスを高めることであり、組織としては制度の確認、ガイドラインの見直し、多職種での対話が有効であることなどが示唆された。今後、具体的な教育プログラムに向けた詳細なレビューが必要である。日本の急性期病院に勤務する医療従事者180名(医師80名、看護師80名、ソーシャルワーカー20名)の調査において道徳的苦痛と平均在院日数の短縮などとの関連を検討したが有意差がなかった。今後、さらに詳細に検討をしていく必要がある。「ポストコロナ時代の感染症や病気との向き合い方」とするシンポジウムを開催し、倫理学、患者、医療者、行政の立場から社会的偏見や自己責任論も含めた問題と課題について議論を行い、今後の研究の示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を踏まえ、医療者が直面する道徳的苦悩に関する教育に関する問題と課題の整理と教材の作成と教育プログラムの構築(2021年度)を行う。①臨床倫理コンサルテーションチームなどの協力を得て医療者が道徳的苦悩を生じた具体的な事例を集約し、医療者が直面する道徳的苦悩と道徳的推論に関する問題と課題を倫理的観点で分析するとともに、多職種で行う教育プログラム(案)の検討を行う。同時に評価指標の検討も行う。②国内外で行われている道徳的推論の向上を目指した教育プログラムの内容と課題の整理、moral case deliberationや関連する教育における多職種連携教育を検討し、Health Mentor Programを応用した教育プログラムも検討する。予備研究:Covid-19の影響を鑑みて2022前半年度に①多職種連携で行う倫理研修で構築した教育プログラムの実施:a.現在実施している多職種での研修で倫理研修で構築した教材を用いた教育プログラム(案)を実施。b.院内の教育を担うファシリテーテータとしての教育(web教材の学習も含む)を実施する。②予備研究における評価を踏まえ,本研究に用いる教育プログラムについて修正。その後、2023年度には教育プログラムの実施,アクションリサーチを行う予定である。
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