本研究は、根拠があり臨床上の効果がある看護技術・プログラムを看護イノベーションと定義し、看護イノベーションの導入にむけた取り組みが終了した後のプロセス「持続可能性」に着目した。看護イノベーションのひとつである背面開放座位を対象として、背面開放座位を過去導入した病棟の看護師を対象に、自記式質問紙調査を実施し、持続可能性と持続可能性の影響要因との関連、その構造を明らかにすることを目的とした。 2023年度は追加のデータ収集を終了し、データ分析を実施、論文投稿の準備を進めた。 最終的に53病棟、看護スタッフ298名、看護師長28名のデータを収集した。作成した持続可能性尺度の信頼性・妥当性、翻訳した3尺度の信頼性・妥当性は確認された。 マルチレベル構造方程式モデリング分析の結果、個人における持続可能性は、背面開放座位に対する好意的な態度が正の影響、業務量が多くストレスが高いことが負の影響を及ぼした。病棟全体における持続可能性に最も影響を及ぼしたのは、組織の準備性、組織の支援やリソースであった。背面開放座位を推進するリーダーやスタッフの存在とその行動は、その他の要因に影響を及ぼし、リーダー・スタッフは直接・間接的に持続可能性に正の影響を及ぼしていた。 本研究成果により、看護イノベーションの持続可能性を目指したリーダー・スタッフ、看護師長の役割を明らかにでき、持続可能性を促す方略を示唆できた。今後の課題は、背面開放座位以外の看護イノベーションの調査を行い、持続可能性の影響要因・尺度を洗練することである。
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