研究課題/領域番号 |
20K10690
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
平尾 百合子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (50300421)
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研究分担者 |
邊木園 幸 宮崎県立看護大学, 看護学部, 准教授 (80405604)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 住民参加型研究 / 感染管理システム / 過疎高齢化地域 / 感染対策 |
研究実績の概要 |
過疎化高齢化地域の住民の感染予防行動を明らかにすることを目的に、高齢化率の高い中山間地域にあるA町で開催した講演会及び地区座談会の参加者を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。講演会では感染症の予防方法を講義し、A町内 6地区での座談会では感染症予防の話と手洗いチェックを行った。 その後、参加者に質問紙を配布し、自由意思によって回答してもらった。回収率は講演会が98%、座談会が100%であった。データに欠損のある回答を除き、分析対象は120枚となった。その内訳は、65-70歳14人(11.7%)、71-80歳52人(43.3%)、81-90歳51人(42.5%)、91歳以上3人(2.5%)となり、男女比は2:8であった。「感染症の予防を常に考えている」は86.7%、「外出時に必ずマスクを着用する」は72.5%、「全く着けていない」はいなかった。予防接種について、「インフルエンザを毎年接種」は92人(76.7%)、「コロナワクチン」は114人(95.0%)であった。感染症に関する情報収集は、「テレビ」が96人(80.0%)、「役場の通知」や「回覧板」が64人(53.3%)であった。今回の講演や座談会については、「役立った」 111人(92.5%)、「時間的に良かった」 97人(80.8%)であった。手洗いチェックは71人(87.7%)が体験した。高齢者の多くは感染予防に強い関心をもっていたが、情報を得るための手段が他の世代に比べ、限られていることが推察された。 その他、これまでに調査した3県の高齢者施設の職員に対する感染予防行動の結果を再分析し、論文投稿の準備を行った。また、令和4年4月に診療報酬が改定されたことを受け、1年経過した令和5年4月に感染対策向上加算別の取得状況を調査し、地域医療圏における感染対策の役割分担の実態をまとめ、誌上発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行され感染対策も緩和されたが、対象地域において、依然、新型コロナウイルス感染症患者の散発がみられたこと、その他のウイルス性感染症(インフルエンザやRS、コクサッキー等)の流行があったことから、研究協力者である当該地域の保健所保健師と中核病院の感染症専従看護師が多忙となったため、研究遂行のための調整が難しくなってしまった また、本研究は高齢者が多い中山間地域を対象としているため、地域住民である高齢者の健康を最優先に考慮した結果、積極的な調査依頼が難しくなり、中山間地域の一部の地域に限定した小規模での住民参加型研究になってしまい、予定よりもやや遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は地域の範囲を拡大し、保健所保健師ならびに地域中核病院の感染症専従看護師と協働で、その病院の感染症看護専門看護師や感染管理認定看護師の協力も得て、住民参加型研究を進めていく予定である。 現在、山梨県内の過疎高齢化が進んでいる中山間地域の保健所保健師ならびに地域中核病院の感染症専従看護師と協働で研究計画立案が終了したため、研究倫理審査委員会への申請準備に取りかかっているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象地域において様々な感染症の流行がみられたことから、研究協力者である保健所保健師と地域中核病院の感染症専従看護師が多忙となり、研究の実施が遅れてしまった。また、本研究は高齢者が多い過疎地域を対象としているため、地域住民である高齢者の健康を最優先に考慮した結果、広く積極的な調査依頼や活動が難しく、予定していた中山間地域での住民参加型研究が次年度に持ち越され、次年度使用額が残った状態となっている。 現在は、過疎高齢化が進んでいる異なる中山間地域の住民参加型研究について、研究計画の立案が終了し、研究倫理審査委員会への審査申請の準備をしている。研究の成果発表については、7月に開催される学術集会の一般口演で採択されており、発表準備に取りかかっている。論文投稿についても、ほぼ書き上げ、投稿準備に入っている。以上のことから、繰り越した研究資金については、今後も引き続き有効に活用していく予定である。
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