研究課題/領域番号 |
20K10720
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
熊谷 歌織 北海道医療大学, 看護福祉学部, 准教授 (20337041)
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研究分担者 |
平 典子 北海道医療大学, 看護福祉学部, 特任教授 (50113816)
前川 真湖 北海道医療大学, 看護福祉学部, 助教 (80803634)
三津橋 梨絵 北海道医療大学, 看護福祉学部, 助教 (00820789)
清水 博美 北海道医療大学, 看護福祉学部, 助教 (40808250) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺がん / スティグマ / がんサバイバー |
研究実績の概要 |
肺がんサバイバーのスティグマ経験の先行要因として一般市民の肺がんや肺がん患者へのイメージを明らかにし、支援プログラムにおける教育内容を検討することを目的とし一般市民を対象に調査を行った。 対象者選定と調査はSurveyMonkey社に依頼し、全国各地の各年代を対象にオンラインでのデータ収集を行った。対象者は124名(男性60名、女性63名)で、年代は19歳以下2名、90歳以上1名を含み、50歳代が37.9%で最多であった。調査の結果、「強くそう思う」「ややそう思う」の回答が多かった項目は、「肺がんになると、体力が落ちる」(88.7%)、「肺がんになると、息苦しさや咳などの症状に苦しむ」(87.1%)といった症状に関するイメージと、「肺がんの治療費は高額になる」(84.1%)、「肺がんの治療や療養は、家族や親しい友人に負担がかかる」(72.6%)といった経済、社会的側面での困難さを持つイメージが強かった。「肺がんは、がんの中でも死に至る可能性が高い」(63.7%)というイメージを持つ人が一定数いる一方で、「肺がんは、早期発見と適切な治療があれば治る」(65.3%)も比較的高かった。病気の原因については、「肺がんになる最大の原因はたばこである」(65.3%)のイメージが比較的高いが、「肺がんは日ごろの行いが悪かった人がかかるものである」は、「あまり思わない」「全く思わない」の回答が62.1%であった。 前年度の研究結果では、肺がんサバイバー自身が他者とのかかわりを通して、命が侵食される空気を感じ、がんを背負わされた自業自得の患者イメージを持たれていると感じ、さらに健康な自己像の揺らぎもあることが明らかとなったが、相手の印象は体力低下や独自の症状を持つイメージが強く、死のイメージや自業自得のイメージは必ずしも多くの人が抱いているわけではないという認識の差異が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、一般市民への調査の準備において、調査による肺がんサバイバーへのネガティブイメージを対象者が持たないよう、調査項目と倫理的な配慮についてを慎重に検討し、また信頼できる調査会社を選定するために時間を要した。また、現在は前年度の結果と今年度の一般市民調査の結果を統合し、肺がんサバイバー自身がネガティブな感情を抱かぬよう支援プログラムにおける教育内容を慎重に検討しているため今年度の実績としては公表できる段階に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度までに明らかとなった結果を基に、肺がんサバイバー自身が置かれる現状について理解を深め、自己の認識を客観的に見つめ変化のきっかけとなる支援プログラムの開発を進める。草案の作成にあたっては、学際的なメンバーによるワーキンググループを立ち上げる計画であったが、可能な範囲で協力者を確保する。その後、完成した草案を用いて肺がんサバイバーを対象とした勉強会を年度内に開催し、プログラム実施後のグループインタビューと、心理的適応尺度等を用いて前後比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年延長が必要となったことから、次年度の支援プログラムの実施と評価に必要な費用とするため。
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