研究課題/領域番号 |
20K10729
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
原 頼子 久留米大学, 医学部, 教授 (60289501)
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研究分担者 |
田尻 祐司 久留米大学, 医学部, 教授 (80469361)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性期看護 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、がん治療中の糖尿病患者の体験を知ることから、血糖コントロールに影響する要因を明らかにし、患者のセルフケアを支援するためのがん治療部門、内分泌代謝内科部門間の連携システムの構築をすることである。 がん治療をしながらも血糖コントロールができるという自信はがん治療に向き合い、QOL維持につながる重要なことであるが、化学治療を行う糖尿病患者は、薬剤の作用や、副作用による食欲低下や味覚変化による栄養状態低下等の影響で、血糖コントロールのセルフケアは難しい状況がある。今までと異なる状況が出現し、変更を余儀なくされた患者の体験や、どのような思いを抱えているのかインタビューを行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、患者の体験を聞くことができない状況が続いている。最近、患者の体験や、実際にセルフケア支援を行い評価した報告が少しずつ見られるようになってきているため、2021年度は状況が整い患者インタビューを始められるまでは文献検討を行った。 肥後ら(2014)はがんと告知を受けたがん治療中・後の50~60歳代の2型糖尿病患者とがんを持たない2型糖尿病患者に質問紙調査を行い、2者間の食事自己管理に対する自己効力感の平均値の間に有意な差は認められず、がんを持ちながらも前向きに生きていこうとしている現状を報告していた。また、中川ら(2019)は、頭頸部がんの治療をする糖尿病患者を対象に、エスノグラフィーを用い、観察とインタビューから、困難を抱えながらも少しずつ対処しようとしている患者の体験を明らかにしていた。一方、山本ら(2020)はがん治療を行いながら血糖コントロールをする患者のセルフマネジメント支援を行う専門性の高い看護師の実際は、自ら有するスキルを活用し、がん治療によって影響を受ける糖尿病患者のセルフマネジメントに対して、支援を行っている現状があると報告していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症により、様々な制限下の中で、がん治療中の糖尿病患者にとって今後の不安やストレスはいかばかりかと考える。その上、感染することはとてもリスクが高く、避けたいことである。そこで、患者は外来受診を極力制限したり、入院中でも人との接触は避けたいと考えている。この現状で病院側も患者への接触に対し制限がかかっており、インタビューへの協力を依頼できる状況が整っていない。現在は、制限が緩和されたら研究ができる準備を整え、状況が整うのを待っている。文献検討や、組織連携システムについての基礎知識を得る学習の時間にあてている。
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今後の研究の推進方策 |
状況が整えば、患者へのインタビューを行う予定である。最近の新型コロナウイルス感染症によるがんの治療に及ぼす影響も考慮し、患者や家族の状況を把握し、負担が少ない方法を考える必要がある。加えて、患者を中心に据えた糖尿病とがん診療分野の連携システム作りを進める必要がある。糖尿病看護を進めるうえではチーム医療は欠かせないため、まず必要なことは、がん治療を受ける患者の特徴を加味した看護を展開するため、糖尿病の専門知識がある看護師と、がん看護のスペシャリストとの連携・協働をはかっていくための具体的で導入可能な方法を考えることである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症蔓延のため、参加予定の糖尿病に関連する学会、がんに関連する学会の開催がWebによる開催となり、交通費の支出がなかった。 また、研究計画通りに進められず、論文投稿のための翻訳料や推敲量の支出がなかった。今後は、新たな知識を取得するために学会への出席や、情報交換会への出席を行うことや、システム作りを進めている施設の見学を行うことで研究を進めるために使用していきたい。
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