研究課題/領域番号 |
20K10749
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
市村 美香 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 講師 (80712281)
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研究分担者 |
佐々木 新介 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (30611313)
荻野 哲也 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (90252949)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | dialysis / hemostasis / training device / hemodialysis patient / nursing |
研究実績の概要 |
血液透析後の止血は、患者が行う大切な自己管理の一つである。止血が不十分な場合には、出血の危険性があるだけでなく、感染や皮下血腫による血管の閉塞などで透析治療が維持できなくなる危険性もあるため、患者は安全で確実に止血する方法を身につける必要がある。そのためには患者自身がトレーニングする必要があるが、その機会は透析後の抜針時に限られ、患者が止血技術を習得する機会が少ない現状がある。そこで本研究では、患者自身が何度でも止血トレーニングができる装置の開発とその有用性を検証する。本研究が目指す止血トレーニング装置は、血液透析患者の平均値に基づき、太さ8mm、深さ2mm、内圧70mmHgの血管モデルを上から押した(止血した)時の圧力が測定できる機能を搭載するもので、止血圧として推奨されている40mmHgで押さえることができるかを判定することができるものである。 本研究目的を達成するため、研究初年度(2020年度)は止血トレーニング装置の製作に取り組んだ。まず、目的とする装置の製作が可能な医療機器メーカーを選定し、研究協力の同意を得た。そして、医療機器メーカーの担当者との話し合いを重ね、研究目的と装置の完成イメージを共有した。装置の完成イメージの構想には、研究分担者や血液透析療法を実施している医療機関に所属する研究協力者の助言を得て、患者のニーズを満たし医療従事者が指導しやすいものとなっているかという点でも検討を重ねた。 その結果、本研究が目指す止血トレーニング装置は、技術的に再現可能という結論が得られ、装置の完成に向けて現在も考案開発を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、止血トレーニング装置の製作を開始することを計画立案していた。製作開始にあたり最も重要であったのは、装置の完成イメージを明確にし、それを製作できる医療機器メーカーを決定することであった。結論的には、本研究が目指す止血トレーニング装置は、技術的に再現可能という結果が得られ、製作業者を決定して装置の完成に向けた開発を進めることができている点において、本研究の進行に遅れはない。 一方で、申請当初の計画で立案していた止血法指導に関する情報収集に関しては、医療施設での聞き取り調査ができず、透析患者や医療スタッフの実際の声を聞いたり現場を見たりすることができなかった。しかしながら、血液透析療法を実施している医療機関に所属する研究協力者の助言を得て情報を収集する体制を作ったことは、この代替策としては有効であると考えている。 以上より、現在までの研究の進捗状況を総合的にみて、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、研究2年目(2021年度)は、初年度に引き続き止血トレーニング装置の製作・改良を行う。その際には、止血法指導に関して情報収集した内容、特に止血法指導で困る血管の特徴を装置に反映できるかなど、臨床現場のニーズを踏まえた改良も検討する。そして装置を完成させた後は、以下に示す有用性検証実験を行う。なお、装置の完成が遅れる場合は、最終年度初めに実験を行う。 試作装置の有用性検証実験は、同意が得られた本学看護学生10名程度を研究被験者とする。試作装置を用い、何回トレーニングすれば推奨されている力で押さえる(止血する)ことができるか検証する(検証1)。そして、その日の2日後と4日後に同様の実験を行い、止血法が習得できたか検証する(検証2)。検証1-2の主な調査項目は、止血できるまでの回数・期間、研究被験者の属性、止血の動作、感じたことなどとする。研究者の役割としては、代表者は研究の責任者として研究活動全般に関わる。研究分担者は、止血トレーニング装置製作への助言と有用性検証実験の結果分析を行う。 さらに、本研究の成果を広く知っていただくために、関連分野の学術集会への参加を積極的に行う予定であり、学会発表や海外誌への論文投稿のための準備を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
止血トレーニング装置の製作にあたり、同様の装置を製作・販売している医療機器メーカーの協力が得られ、申請者らが求める装置を製作するための最善の方法について議論することができた。その結果、当初購入を予定していた機器部品を使用しない方法で製作する工程を新たに構築することができ、研究初年度の物品費に計上していた金額をほとんど使用しなかった。そこで、初年度の費用を今年度に繰り越し、新工程での装置の製作から完成までを目指した研究計画に変更し、患者のニーズを満たし医療従事者が指導しやすい状態にまで完成度を高めたいと考えている。試作装置の製作費については、初年度から繰り越した金額と当該年度予算額を合わせた範囲で収まるとの試算も出ているため、問題はない。 また、新型コロナウイルスの影響により、日本看護技術学会や日本看護科学学会、日本看護静脈関連研究会がオンライン開催となったため、学会参加費や旅費、会議費などを使用せずに今年度に繰り越した。これらの学会や研究会への参加費用は毎年研究費として計上しているため、初年度中に使用しなかった金額は、試作装置の考案や製作費に充てる予定である。 以上のように、次年度使用額が生じたものの、その理由は試作装置のよりよい製作方法の発見や学会などへの参加方法の変更によるものであったことから、本研究の遂行に支障はないと考えている。
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