研究実績の概要 |
重度脳損傷に伴う意識障害の発症後に, いかなる治療を行っても意識の回復が認められない場合に「遷延性意識障害」(以後, 意識障害とする)と診断される. 疾患や受傷後の急性期には頭蓋内圧亢進を予防するために頭部を挙上した臥床安静が必要であるが, 意識障害が持続していると急性期を脱した後にも臥床状態となっている場合が多い. また, 意識回復がみられない場合には積極的なリハビリテーションを実施されることは少なく, 関節拘縮や筋力低下, 沈下性肺炎, 褥瘡等の廃用症候群が重複して発症しやすい状態にある. そのような状態であっても, 意識障害患者に対する看護介入として概日リズムの調整や座位の保持, 口腔ケアを兼ねた口腔内マッサージ, 摂食・嚥下訓練, 関節運動と血流促進を目的とした温浴等の看護介入を行うことにより意識回復や日常生活動作の改善等が認められたという報告が散見されている. しかし, 既存の評価指標では意識障害患者の微細な変化を評価することは困難であり, 看護介入の目的となる日常生活を営むための機能や能力を評価する指標はいまだ開発されていない. そこで本研究では, 本研究は,長期化している意識障害患者の看護介入の成果を評価するためのアウトカム指標を開発することを目的としている. 本研究は令和2年度から開始しているが, 新型コロナウイルスの影響により, 医療機関における看護師を対象にした研究が遅れている. 令和5年度は看護師を対象にしたアウトカム指標に関する質問票を作成し,表面妥当性を得ている. 令和6年度に実質的にコンセンサス・メソッドであるデルファイ法を用いて, 意識障害患者の看護を専門的に行っている寛喜を対象に調査する予定である.
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