研究課題/領域番号 |
20K10772
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
渋谷 菜穂子 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (40324420)
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研究分担者 |
高橋 里沙 天理医療大学, 医療学部, 准教授 (90596206)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精神科看護師 / 精神科の理解度 / 質問紙 |
研究実績の概要 |
看護師には患者に対して怒りをコントロールすることが求められる。看護師の日常場面(家庭、職場等)と対患者場面における怒りの経験がどのように異なるかを調査したところ、①日常生活場面/②対患者場面(一般診療科)/③対患者場面(精神科)の3場面において、看護師が経験した怒りの強さ(10段階評定)は、日常生活場面=平均7.35>対患者場面(一般診療科)=平均5.93>③対患者場面(精神科)=平均5.44であり、各場面には有意差が見られた。このことから、特に精神科に勤務する看護師は強い怒りを感じないか、もしくは強い怒りを感じながらも看護師自身が持つ抑制(諦め、怒ることへの罪悪感など)の存在が推測された。 その後一連の研究を通じて、1)精神科看護師が対患者場面で「怒りを体験した後~反応を起こすまで」の経過を示す因果モデルを作成し、2)怒りを喚起する原因には「故意か否か(悪意の知覚)」や「被害感」が関連していることを見いだした。1)の因果モデルは、結果として一般基準値は上回らなかったものの、Cronbach's αやRMSEA等の値より、結果の使用に耐えうると判断できるモデルを作成することができた。 しかし、そのモデルを分析したところ、当初の仮説では、怒りの喚起→反応へ進む際、精神科看護師が怒りを表出せず抑制するためには「怒りのコントロール」が大きな効果を示すと考えていたが、実際の統計分析結果では「怒りのコントロール」はわずか-0.03という小さな効果しか見られず、また、精神科看護師が感じる「悪意の知覚」は0.22、「被害感」は0.12と予想より小さな効果しかみられなかった。 そこで、本研究実施者の別研究より導き出した「怒りの表出に影響を与えた要因」の中から最も影響が大きいと思われる「精神科に対する理解度」を選び出し、精神科看護師の理解度を測定する尺度を開発することが本研究の目的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題の文献等の資料収集や講読に時間がかかり、質問紙のたたき台を作成するのに予想外に時間がかかってしまった。また、コロナ禍により本務の授業形態の変更を余儀なくされ時間が取られてしまったこと、学外の研究分担者・研究協力者と直接集まって相談することが不可能な場合が多くなり、思うように研究が進まなくなってしまい、当初の計画より遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、研究代表者及び研究分担者が居住する県内の精神科病院に勤務する看護師を対象にパイロットスタディを実施済みである。その後、項目の洗練を繰り返し、「精神科の理解度」チェック項目はほぼ完成している。今後は、精神科看護師300名程度を対象に本調査を行う予定である。その調査が終了した後、最終の研究段階として、精神科看護師が選択する、怒り感情の表出方略/非表出方略という怒り感情の制御尺度の作成に取り掛かる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】研究遂行に必要で、かつ参加予定であった海外研修への参加を、コロナ禍により見合わせざるをえなかった。また、コロナ禍により、学外の研究分担者及び研究協力者と直接集まって相談することが不可能な場合が多かったため、研究の進行にやや遅れを生じている。そのため、予算を執行することができなかった。 【使用計画】遅れている研究計画については、今年度、既に学内の倫理審査に諮り、研究(アンケート調査)の進行に向けて着々と進めている。今後、アンケートの実施が進めば、その分析に必要な統計ソフト(SPSS-Advanced)、さらにその後に予定している面接調査の研究の分析に必要なソフト(テキストマイニング)を購入する予定にしている。また今後、コロナワクチンの普及により海外研修が再開されれば参加を予定している。
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