研究課題/領域番号 |
20K10775
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研究機関 | 滋慶医療科学大学院大学 |
研究代表者 |
笠原 聡子 滋慶医療科学大学院大学, 医療管理学研究科, 准教授 (30283782)
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研究分担者 |
石松 一真 滋慶医療科学大学院大学, 医療管理学研究科, 教授 (30399505)
大野 ゆう子 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任教授(常勤) (60183026)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 患者急変 / 院内迅速対応システム / 気づき / 看護ケア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、院内迅速対応システム(RRS: Rapid Response System)において、病棟看護師による専門対応チーム(RRT)の迅速な要請を妨げている「障壁」を解明するために、患者急変への気づきからRRT要請までの行動プロセスとその背後にある認知プロセスを検討することである。目的を達成するため、具体的には以下の3つをあげていた。すなわち、「1. 行動プロセスからみた障壁の解明:診療録から」、「2. 認知プロセスからみた障壁の解明:面接調査から」、「3. 対応策の検討:組織的視点から」を主な目標としてあげていた。 令和2年度の主な実績は以下のとおりである。 (1)RRSにおける障壁に関する国内外の文献を調査、(2)診療録とRRTおよびCB管理日誌の過去6年間(2013年-2018年)のデータを後ろ向きに分析、(3)診療録とRRTおよびCB管理日誌の過去1年間(2019-2020)のデータを前向きに分析、(4)(3)での前向き分析の結果を学術集会で発表
上記のうち(3)の内容を示す。院内急変によりICUへ入室する経路として、心停止が差し迫った状態は救急チーム、それ以外はRRT、またチームを介さない主治医調整もある。ICU 予定外入室となった患者の入室経路別での看護記録の特徴を検討した。結果、RRT90名、救急チーム27名、主治医調整63名、心停止事例5名。入室経路別で呼吸数記載率やNEWS算出に必要なバイタルサイン記載状況に差はなかった。要請直近のNEWSに、救急チームとRRTで差がないことから、各チームの要請基準が混在している可能性がある。呼吸数記載率は全経路70%程度で、定期測定は概ね根付いているが、チーム要請直近の記載は低かった。要請直近のバイタル記載から要請まで、最短のRRTでも40分であり、観察で得た情報がタイムリーな要請に結び付いていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症蔓延にともない、調査対象施設との打合せやデータのやり取り等に支障が生じているため。また、新型コロナ感染への教務および学内業務の対応が追加で必要となり、研究に十分な時間をとることができなかった。 さらに、当初、海外学会での途中経過報告等も予定していたが、こちらも当面見合わせることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、大きく2つの研究と1つの討議検討に分けて行うこととなっており、2020年度は「研究1:医療情報データの分析」が中心であった。 2021年度は「研究2:医療者へのインタビュー」を計画していたが、院外関係者が面談調査をすることが非常に難しい状況にある。したがって、直接面談調査から、調査票によるアンケート調査への変更などを今後検討している。 また、研究代表者である私個人の事情であるが、年度途中での所属機関の異動が予定されており、その点においても、調査フィールドの再検討も含め、計画の変更が必要になると思われる。 さらに、今年度実施予定の調査に関する倫理審査を現職で提出することが制度上できないため、異動先での提出となることから、半年から1年の調査の遅れが生じる可能性があると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症蔓延にともない、出張や調査対象先との打合せ等ができず差額が生じた。 2021年度は、感染などの社会状況によるが、異動先の研究体制が整い次第、資料収集や調査を実施するなど研究推進のために経費を執行する予定である。
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