研究課題/領域番号 |
20K10796
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
瀬戸 奈津子 関西医科大学, 看護学部, 教授 (60512069)
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研究分担者 |
正木 治恵 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (90190339)
清水 安子 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50252705)
高橋 延行 関西医科大学, 医学部, 准教授 (10298870)
大原 千園 関西医科大学, 看護学部, 講師 (90376202)
村内 千代 関西医科大学, 看護学部, 助教 (00824278)
藤本 悠 関西医科大学, 看護学部, 助教 (70803310)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 外来看護 / 高齢慢性疾患患者 / 包括的アセスメント / ツール開発 |
研究実績の概要 |
本研究では、高齢慢性疾患患者を対象に在宅と病院をつなぐ外来看護の機能を強化するために、外来看護包括的アセスメントツールを開発することを目的としている。 2020年度より、高齢慢性疾患患者への外来看護包括的アセスメント技術の体系化に着手し、高齢者の複合疾患として要支援・要介護が必要になった原因として上位に位置する主な慢性疾患について国内外の関連文献を収集し、システマティックレビューを始め、信頼性のあるガイドラインと合わせて外来に通院する高齢慢性疾患患者への看護の抽出作業を進めている。 2021年度に得られた結果の一つとして、フレイルの特徴は、高齢、女性、身体機能低下、栄養面や慢性疾患に関係する健康状態の悪化がみられ、フレイルを早期に評価、介入することを課題にあげる文献が複数みられたことである。外来看護師がフレイル予防に介入することは、慢性疾患管理において有用である可能性が示唆された。 もう一つとして、外来看護師が患者に「声をかける」という行動に着目し文献検討を行なった結果、外来看護師が問題を抱えている可能性のある患者を見つけ出すために、重症度・緊急性の判断、潜在的ニーズがないかのスクリーニングを行ない、看護をうみだすきっかけとして意図的に声をかけ、看護実践につなげていることが明らかになった。 全ての患者と関わることの難しい外来において、診療の流れに沿っているだけでは接することのできない患者に対しても、煩雑な外来環境をふまえ、患者側から忙しいと認識されていることを理解し、看護師側から声をかけ、患者が相談するきっかけや不安などの表出の機会をもつよう心がけていた。外来看護師はこれらの声かけをひとつの意図のみではなく複数の意図で活用し、さらには段階的に、または流動的に用いていることが示唆された。 以上高齢慢性疾患患者に対する包括的アセスメントツールの暫定版作成に資する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度より、高齢慢性疾患患者への外来看護包括的アセスメント技術の体系化に向けて、高齢者の複合疾患として要支援・要介護が必要になった原因として上位に位置する主な慢性疾患のうち、循環器疾患と糖尿病の関連文献を収集し、システマティックレビュー、信頼性のあるガイドラインと合わせて外来に通院する高齢慢性疾患患者への看護の抽出作業を行う予定であった。しかしながら、COVID-19対応によるオンライン授業の準備、事務局を務める学術集会の延期やオンライン開催への変更対応等に多くの時間を費やしたため、予定より作業がやや遅れてしまった。その遅れの影響とCOVID-19対応が継続されたため、2021年度もやや遅れている状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
高齢慢性疾患患者への外来看護包括的アセスメント技術の体系化に向けて、高齢者の複合疾患として要支援・要介護が必要になった原因として上位に位置する主な慢性疾患、脳血管疾患を含む循環器疾患(高血圧症、不整脈、慢性心不全等)、糖尿病、フレイル、認知症に関する国内外の関連文献を収集し、システマティックレビューを進め、信頼性のあるガイドラインと合わせて外来に通院する高齢慢性疾患患者への看護の抽出作業を完了する。同時に関連学術集会に参加・発表し、情報収集と整理を行う。以上より、高齢慢性疾患患者に対する包括的アセスメントツールの暫定版を作成する。 申請時の計画では、実際に活躍しているプライマリケア領域のナースプラクティショナー数名(3名程度)ならびに、総合診療医数名(3名程度)にヒアリングを実施し、活用可能性を検討し、検討結果をツールにフィードバックし洗練させ、一般病院の外来にて試行と検証を行う予定であった。しかしながら、外来看護師の看護実践に関する先行研究を読み進める中で、一般病院の外来看護師には「外来受診中の今ここで看護を必要としている患者を見つけ出す能力」が求められることを確信し、申請当初本研究が目指した外来看護の機能の中で、専門分野を持つ看護師ではなく、むしろ一般の看護師が簡便に使えるツールを用いてジェネラルに活躍することを望んでいた原点に立ち返った。 したがって、今後は、一般病院の外来に所属する熟練した外来看護師が患者・家族に声をかける判断とその意図をも明らかにする。これにより、多数の患者の中から看護を必要とする人を抽出するために外来看護師に求められる判断能力や、外来患者に対するケアの質向上、ひいては地域包括ケアシステム構築における外来看護の役割から、高齢慢性疾患患者に対する包括的アセスメントツール暫定版の活用可能性へとつなげ、検証過程へと進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度同様に2021年度も学内外の研究分担者がCOVID-19対応にて関連学会学術集会の延期・オンライン開催への変更により、学術集会参加費・旅費等が予定通りに支出できなかった。 2022年度は、計画の変更に伴い、外来看護をはじめフレイルや糖尿病に精通した3名の研究協力者を加えた研究組織により、計画的に使用予定である。
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