研究課題/領域番号 |
20K10809
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
橋本 顕子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00381971)
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研究分担者 |
風間 眞理 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20347371)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 恋愛関係 / 精神保健サービス |
研究実績の概要 |
恋愛とは、浦河べてるの家(2010)によると「男女関係を越えて、人と人とが“愛しあう”という究極のテーマをもたらすばかりではなく、現実的には、仕事やお金の問題なども巻き込み、さらには新しい命の創造にもつながる、とても大切なエピソード」とされ、さらに、浦河べてるの家(2010)はそれが「究極の人間関係」であり、リカバリーのプロセスであると指摘している。 本研究は、これら恋愛の定義をもとに、統合失調症をもつ男性が抱える恋愛や性の問題に関する年齢に応じた考えや悩み、その対処、および、支援を明らかにすることを目的とし、当事者と施設を対象とした調査を行うものである。2021年度は、2020年度に作成した質問紙原案を調査協力施設のスタッフによる質問項目の妥当性の確認を行ったうえで、全国の精神科デイ・ケア等や地域活動支援センターなどの社会福祉施設で調査を行う予定であった。同年、2020年度に作成したインタビューの調査項目を当事者に確認のうえ、当事者にインタビュー調査を行う予定であった。 しかしながら、恋愛を含む「性」に関して、個人のニーズとして社会で広く認められていない日本の文化的側面から、地域生活支援事業を担う各地方自治体の解釈に支援内容が影響を受ける社会福祉施設は恋愛や性の問題に関する支援に差が生じていると考えられた。そのため、統合失調症をもつ人を地域で支援している社会福祉施設の種類に基づく支援内容の特徴を再検討する必要性が生じた。 その結果、統合失調症をもつ人を地域で支援している対象施設は、当事者が人々と交流ができ、スタッフが当事者を対面で支援するところとし、関東地方と関西地方における精神科デイ・ケア等や就労継続支援B型事業所とした。統合失調症を含む精神障害をもつ人の恋愛に対する支援の状況は、精神障害をもつ人やその恋愛に関する施設の方針や、恋愛のプロセスに合わせた集団支援と個人支援などから構成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
精神障害をもつ人を地域で支援している施設を対象とした質問項目の妥当性を、調査協力施設のスタッフにより確認を行ったうえで、精神障害をもつ人が地域で恋愛するための支援状況についての実態調査を行う予定であった。しかし精神障害をもつ人を地域で支援している社会福祉施設の種類に基づく支援内容の特徴を再検討する必要性が生じた。 また調査対象となる施設に関して、昨年度から継続しているコロナ感染症対策のため、施設の閉所や利用時間短縮など施設の活動状況などにより調整が遅れるなど課題があり、施設の実態調査に取り掛かれずにいる。 また、統合失調症など重度の精神疾患を有する人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患しやすく、また死亡率が高いことが知られているために、外出制限などにより精神科デイ・ケア等や社会福祉施設の利用を控える人もいるほどであった。そのためインタビューの質問項目の妥当性を当事者に確認してもらう調査は調整が難航し、予定の調査を行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に、関東地方および関西地方にある精神科デイ・ケア等および就労継続支援B型事業所を対象とした実態調査により、精神障害をもつ人を地域で恋愛するために施設が実践している支援の状況を明らかにする。実態調査は昨今社会福祉施設を対象にした施設において増えてきているWeb調査も併用することで、統計入力の時間短縮を図る。 さらに、関東地方および関西地方にある精神科デイ・ケア等および就労継続支援B型事業所を利用する統合失調症をもつ男性を対象としたインタビュー調査の予備調査および本調査を行う。予備調査において、オンライン面接も取り入れ、オンライン面接時の諸注意を確認し、本調査でも取り入れる。その後、インタビュー調査の結果をもとに、統合失調症をもつ男性を対象にした実態調査を行う。このときにも、Web調査も併用できるようにして、統計入力の時間短縮を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた実態調査やインタビュー調査、および、質問項目やインタビュー項目の確認は、新型コロナ感染症対策として施設の活動状況や当事者の施設利用状況などにより取り掛かれず、次年度に予定している。そのため、当該年度に予定していた調査による郵送費および交通費の支出額を次年度分として請求した。
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